「えっと……マーリンさん、何をしているんですか?」
「君は――――パッションリップだったね。何をしているのかという質問だけど、僕はただ面白い事が起きないかと思って見ているだけさ」
「な、なるほど……? あの、楽しむのはいいんですが……死なない様にしてくださいよ?」
「……アナも言っていたけど、もしかして、カルデアって危険地帯なのかい?」
「私が来た時はそんな危険じゃなかったんですけどね……」
優雅に紅茶を飲んでいたマーリンは、近づいてきたパッションリップに言われた言葉に、思わず言い返したのは仕方のない事だろう。
そんなやり取りをしてから数分。今まで大事件には至っていなかったため放置されていた二人が休憩室を荒らす。
「ヘラクレスゥゥゥゥゥゥ!!!!」
「――――――――――!!!」
吹き飛ぶ扉。転がり込んでくるエルバサことペンテシレイア。幸い休憩室にいたのはサーヴァントのみで、咄嗟に回避したのは流石サーヴァントと言うところだろう。
そして、そのペンテシレイアに追撃するのはヘラクレス。
マーリンは何が何だか分からないと思いつつも、優雅っぽいポーズをやめるつもりはないらしい。
「まだ死なないか! なら……!!」
「おっと。宝具展開かな? うんうん、確かにこれは物騒だ。で、入り口がそこだから逃げられないんだけど、どうすれば良いんだい?」
「えっと……エルキドゥさんが来るまで死なないようにするくらいです」
「雑だね! というよりも、いつもそんな感じなのかい?」
「まぁ、こんな感じです。はぁ……あの二人、というよりも、ペンテシレイアさんだけでも抑えられればいいんですけどね」
パッションリップはそういうと、じりじりとマーリンを前に押し出していく。
「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ!! 僕を前に押したってどうにもならないことはあるんだよ!? なんであんな危なそうなのを僕に任せようとするかな!?」
「何言ってるんですか。マーリンさんの幻術でどうにかするんですよ」
「おっと! 僕に頼るつもりだったんだね!! もしかして僕の所に来たのはそれが原因かな!?」
「…………」
「図星だね!? でもまぁ、うっかりしたら本当に死んじゃいそうだからね!!」
カルデア内は安全だと思っていたのだが、案外そうとも言えないらしい。という事に気付いたマーリンは、すぐにスキルを使おうとし――――
地面と天井から現れた鎖が、ヘラクレスとペンテシレイアを拘束する。
「全く……どうしてこうも面倒ごとが起こすのか。君たちは部屋に戻ってて。というか、ペンテシレイアは後で修理を手伝って貰うからね」
そういうと、エルキドゥは二人を引きずっていく。
マーリンはそれを呆然と見て、
「あぁ、だから君たちはたいして慌てないわけだ」
「普通に慣れますよ。日常風景ですし」
「……これが日常風景っていうのも嫌な話なんだけどね……」
マーリンはそう言うと、ため息を吐いて、紅茶に手を伸ばし――――中身が零れていたので、泣きながら淹れなおすのだった。
剣豪始まるし、アガルタキャラの真名バレしても大丈夫だよね! という思考で。
パッションリップの被虐体質はイジメたくなるというか、攻撃させたくなるものだと聞いたので、今回はこんな感じのキャラですよ。書きにくくなりましたけどね。