「さて。聖杯は捧げたものの、種火が足りなくて現在放置気味です。どうしましょう、エウリュアレ様」
「さっさと集めてきなさいよ。それと、わらび餅を取りに行きたいから行っても良いかしら」
会話の最中にスイーツを取りに行って良いか聞いてくれるエウリュアレに、前とはちょっと変わったかな。としみじみ思いつつも、後で自分が行くと言って、阻止するオオガミ。
エウリュアレはそれを聞いて、渋々と椅子に座り直すと、
「それで、私になんて言われたいの? それとも、宝具でも撃てば良いかしら?」
「女神様。殺意が押さえられてないんですがそれは」
「押さえる気、無いもの」
当然でしょ? と言って、微笑むエウリュアレ。
オオガミは、そうなるだろうと思っていたのか、動揺は見られない。諦めのような気持ちはあるのだろうが。
「で、どうするの?」
「いや、流石に罵倒されたい訳じゃないんだけど、とりあえず誰かに言いたかっただけ」
「ふぅん? それで私の足を止めたのね。良い度胸じゃない。その喧嘩、買うわよ?」
「あっれぇ? この女神様、いつの間にかスーパー暴力的になってるんですけどぉ……?」
「誰が原因だと思ってるのよ。だ~れ~が~!」
「……ノッブか!」
「貴方に決まってるでしょう!」
スパーンッ! と響く軽快且つ大きい音。ひっぱたかれたオオガミは困惑しつつエウリュアレを見ると、その手にはハリセンが握られていた。
一体どこから出てきたのか。その答えは、すぐ隣にいるノッブの、してやったり。と言いたげな表情が物語っていた。
「ちょ、ノッブ! いつからそこにっていうか、どうしてエウリュアレにハリセンを渡したのっていうか! なんて恐ろしいことをしてくれるんだ!!」
「儂はほら、面白い方の味方じゃし」
「……これ、振りやすいわね……」
「ほら!! 恍惚とした表情でハリセンを眺め始めたじゃん!!」
「うむ、素振りまで始めおった……であれば、マスターが練習台じゃな!! 似合っておると思うぞ!! じゃ、儂はこれで!!」
「あ、ノッブ!! 後で絶対後悔させてやるからなぁぁぁ!!!」
走り去るノッブに、オオガミの声は届いたのか否か。とにかく、彼女は全力で逃げ去った。
置いていかれた上に逃げ遅れたオオガミは、何時の間にかこちらに向き直っているエウリュアレを見て、頬を引きつらせる。
「それで、マスター。あの子の種火をどうするか、だったわね」
「あっ……いえ、その……はい、そうです」
「じゃあ、答えるわね?」
そういうと、エウリュアレは高く高く腕を振り上げ、
「早く行ってきなさい!!」
「ごめんなさいっ!!」
全力でオオガミの後頭部にハリセンを叩き付け、その勢いにオオガミは机に顔面を強くぶつけるのだった。
衛生兵! 負傷者一名!! 直ちに医務室へと連行していくんだ!!
いやぁ……気付いたらまたエウリュアレと一緒にいるぞこのマスター。何時になったらエウリュアレ離れできるんだこのマスター。
しかし、ハリセン……昔もどっかで使った気がするんですよねぇ……気のせい?
ちなみに、最後のはギャグにするかイチャイチャにするかで数分悩んだ結果、イチャイチャなんぞこの作品に合わねぇだろという事で、イチャイチャにはご退場いただきました。