「ふっ――――!!」
短い呼気と共に、無数の鎖が量産型メカエリチャンを貫き破壊する。
スタッと華麗に着地したエルキドゥは、視界の邪魔になっている髪を後ろに流し、オオガミのもとへと戻る。
「これで良いかい? マスター」
「十分すぎる成果だよ。等倍だし、凌駕しろって言ってる訳じゃないしね。出来るのならそれが一番だけども」
「まぁ、マスターがそれで良いなら良いさ。僕はただ、従うのみだよ」
「おぉ、なんか、昔を思い出す従順さ……まさか、変なものでも食べた?」
「…………マスター? 僕はあの暴走駄女神じゃないんだ。拾い食いなんてしないよ」
「えっ、あ、うん。分かった」
こんなことを聞いたら、どこかの女神は『私だって拾い食いなんてしないわよ!』と言い返しそうだが、ここで下手なことを言うと、とんでもない目に合いそうなので黙っておくオオガミ。
「それにしても、倒しづらいね、あの機械。硬いよ全く」
「まぁ、クラス相性って壁もあるしね。そのためのリップなわけだけど」
「彼女には何とか踏ん張ってもらいたいけど、集中狙いされたらどうしようもないね」
「あうぅ、なんか狙われちゃってすいません……!!」
「あはは、エルキドゥ君はそんなおっかない顔をして、怖いなぁ全く」
「……マーリン。槍で貫いてあげてもいいんだよ?」
「君のそれは鎖だろう? 強制的な束縛は好きじゃないんだ。ごめんね!」
そういって、颯爽と去っていくマーリン。
オオガミとリップはそれを見送り、エルキドゥはため息を吐き、マーリンの足元から鎖を展開し捕縛して引きずり戻すのだった。
「あっはは……いやぁ、こうもアッサリ捕まると、恐れ入るよ。さすがあのギルガメッシュの親友だ」
「なるほど。君はギルの事を知ってるんだね? あぁ、そう言えば、メソポタミアの時にも君はいたね。よし、後でその時のギルについて聞かせてもらおうかな」
「おっと、まさかのパターンだね。全く、ギルガメッシュ王にも困ったものだよ。君が召喚されないせいで僕が面倒ごとに巻き込まれそうじゃないか」
「エルキドゥ、お手柔らかにね」
「うん。助けるつもりが一切ないのは伝わって来たぞぅ!! そろそろここは僕を精神的に潰すつもりじゃないかと思えてきた!!」
「えっと、エウリュアレカウンセリング、受ける?」
「洗脳だよねそれは!!」
およそオオガミの提案は正気だとは思えなかったマーリン。仕方のない事だろう。事実、オオガミはほとんどエウリュアレに洗脳されているようなものである。
「あの、マーリンさん」
「あっ、な、なんだい?」
「頑張ってくださいね」
「うん、そう言うかなって思ってたよ!」
最後の望みも、アッサリと断たれるのだった。
大体マーリンが酷い目に遭ってる時はリップがいるんですが、一体なぜなのか……
いい加減、マーリンには平和に暮らしてもらいたいものです。具体的にはお話のお兄さんになっていてください。