「うん、まぁ、終わらないのはわかってたよ」
「うむ。それで吾がどうするのかも分かっていただろう?」
「……エミヤに何か作って貰えるようにするのでどうでしょうか」
「許す」
そう言うと、茨木は構えていた右手を降ろす。
エミヤの料理は、彼の預かり知らぬところでオオガミを救っているようだった。
正座をさせられていたオオガミは、痺れた足を伸ばし、回復を待つ。
そこへメカエリチャン狩りが一段落したエルキドゥ達が戻ってくる。
「……僕たちが集めている間に、一体何があったんだい?」
「いえ、私にはちょっと分からないです……」
「まぁ、彼女が暴れなくなったということだけ分かれば良いんじゃないかな?」
「ふむ、それもそうだね。じゃあ、そういうことにしておこうか」
エルキドゥはそう言うと、ふと遠くを見る。
瞬間、オオガミの近くに落ちてくる一つの影。
オオガミが振り向くと、そこにはステンノがいた。
「ふぅ。こんな不安定なの、よく形を保っているわ。それに、中々面白いわね」
「ステンノ……しばらく姿を見ないと思ったら、何処にいたの?」
「ちょっと建物を見回っていました。かなり楽しかったわ」
「そ、そう……そんなに楽しめた……?」
「えぇ。最上階の姫路城から見える満月に、メカエリチャン。全てが逆さまのピラミッドに、その超重量を何故か支えているチェイテ城。そして、この広大な地下施設。えぇ、えぇ。楽しいです」
「なるほど……いや、楽しめたのなら良いんだけど、そもそも、このチェイテピラミッド姫路城って、敵がいたと思うんだけど……」
「皆さん、快く退いてくれましたよ?」
「……もしや、エリちゃんに味方をすると襲いかかるパターンのやつなんですか……?」
「そこまでは流石にわかりませんけど。とにかく、誰も襲い掛かっては来ませんでしたよ」
さすが女神様というべきか、全員が道を明け渡したらしい。羨ましいことこの上ない。
オオガミはそんなことを思いながら、痺れがようやく取れた足で立ち上がる。
「うぅむ、吾もあのように一度見て回ってみるのもありか……?」
「暴れられるだろうけど、やられない程度でね?」
「当然。蹂躙するのは良くても、されるのは好かんからな」
「まぁ、泣いて帰ってこなければ良いかな。無理しないでよ?」
「むぅ! 童のように扱うでないわ! 吾は大江の山の総大将。己の限界くらい測れるわ!!」
ドヤ顔で胸を張って宣言する茨木。
しかし、たまに泣きながらやって来る時があるので、不安しかないオオガミ。
「良いじゃないかマスター。僕が周回の合間に見に行けば良いんだろう?」
「う~ん……いいの?」
「あぁ。任せてくれ」
「じゃあ、お願いするよ」
まるで、子供が不審者に捕まらないかを心配する保護者のような雰囲気が漂う二人に、茨木は頬を膨らませて不満そうな表情になる。
「吾はもう行くからな!」
「あぁ、うん。気を付けて行ってくるんだよ!」
「だから、吾は問題ないと言ってるだろう!?」
文句を良いながら、茨木はエレベーターに乗って上へと上がっていくのだった。
ずっとステンノを一番後ろに置いておいたのに一切作品に絡まないという不思議。エウリュアレと扱いやすさが違うんですよね……
そして、子供のような扱いを受けるお子様可愛いバラキーですね。明日までに終わると良いなぁ、クッキー……