「マシュ~。儂、暇になったんじゃけど~」
マシュにもたれかかり、マシュの手元を覗き込むノッブ。
マシュはそれに驚き、振り向くと、
「な、なんで管制室に来るんですか!! というか、刑部姫さん達とゲームしてたんじゃないんですか!」
「えぇ~? 一週目終わったし、二週目は流石にのぅ……いや、まぁ、やるんじゃけども」
「そんな短期間で終わるんですかアレ……!! 明らかにもっと時間がかかると思ったんですけど……!!」
「ふふん。あの程度、儂にかかれば余裕じゃ」
「嘘よね。だって、ノッブ、ぶっ通しでやり続けてたじゃない」
「うぐっ」
「え、エウリュアレさん! ちょっと、信長さんを連れて行ってくれませんか?」
「ふふ……残念だったわね、マシュ。私が貧弱だというのを忘れてないかしら」
「レベル差があるじゃないですか! どうしてそれで引き剥がせないんです!?」
「貧弱な女神が、天下取りかけた戦国武将に勝てるわけないじゃない」
「ドヤ顔で言われても……!!」
一体どこからその自信が出てくるのか。自信満々にノッブに勝てない宣言をするエウリュアレに、せめて努力はしてみてほしいと思うマシュだった。
「それで、マスターはどれくらいで帰って来そうなんじゃ?」
「明日くらいには帰ってくると思うんですけどね。ただ、もしかしたら靴下集めでイベントが終わるまで籠るかもしれないですね……先輩ですし」
「まぁ、マスターじゃしなぁ……まぁ、待っておればそのうち帰って来るか」
「そうですね。って、だから、なんでここに来たんですか」
「いや、本当はおっきーから逃げて来たんじゃよねぇ……なんせ、やらせようするんじゃもん。二週目」
「やってくればいいじゃないですか……コレクター精神は何処に行ったんですか」
「儂、別にそんなコレクター精神は無いし……」
「なんで今回に限ってコレクター精神は無いんですか……!!」
どうすればこの戦国武将を引き剥がして追い出せるかを全力で考えるマシュ。
しかし、そんなマシュに、救いの手が差し伸べられた。
「ノッブ~? どこ行ったの~?」
「うっげぇ! おっきーが来たんじゃけど、来たんじゃけど!!」
「ほら、ノッブ。さっさと行くわよ」
「い、嫌なんじゃけど!! 隠れる所を探さねば……!!」
「別に遊んでるだけなんだからいいじゃない……ほら、行きましょ」
「い、嫌じゃ~~!! だって、あのゲーム、めっちゃ死ぬんじゃもん!! 絶対嫌なんじゃけどぉ!!」
「諦めて。というか、バラキーはどうしたのよ」
「バラキーはなんか教会で聖女っぽい獣と戦って、回復されて叫びながらゴリ押しで潰してたんじゃよ」
「案外進んでる……のかしら?」
「さぁ? おっきーなら進捗状況は分かると思うんじゃけどね?」
「じゃあ、確かめに行くわよ、ノッブ」
突然聞こえる刑部姫の声。ふと気づくと、ノッブの後ろに集まっていた折り紙の蝙蝠の群れに、蒼い顔で頬を引きつらせるノッブ。
「わ、儂はもう戦わんからな!?」
「バラキーの様子見に行くだけだからいいじゃん? レッツゴー!」
「最近、お主が引きこもってるのを見ない気がするんじゃが……!!」
「一体誰のせいだったっけ? ほら、ノッブはまだ二週目があるんだから頑張ってやるしかないんだよ!」
「ぐぬぬ……まぁ、バラキーがどこまで進んだかは興味があるからの……行くか」
「……本当に何しに来たんですか……他の所に行ってくださいよ……」
「ごめんなさいね、マシュ。ノッブが、最近マシュに絡んでないって言って突撃していったのを止められなかったわ」
「次からは無い様にしてくださると助かります。エルキドゥさんに頼っても良いですから」
「私が苦手なんだけどね……じゃ、私も行ってくるわ」
エウリュアレはそう言うと、刑部姫に連れ去られたノッブを追って、部屋を出て行くのだった。
ジャックがいなくて悲しくなったので、待機組の話を。