「それで、マスター達は何をしてるの?」
ノッブの工房の隅で作業しているオオガミの手元を覗き込むナーサリーとサンタジャンヌ。
ノッブが部屋の反対で危険な仕事をしているので、二人はオオガミの近くにいるのだった。
「ん~……まぁ、年末にやろうと思ってる遊びの用意かな。やるからには全力で仕込んでおかないとね」
「私たちにも出来る事はある?」
「そうだねぇ……あぁ、あるある。手紙書いてくれる?」
「手紙?」
「そうそう。この人に、感謝の言葉を書いた後に――――」
オオガミはナーサリー達にやることを指示して、それに対してナーサリーは楽しそうに笑いながら、
「――――面白そうね!!」
「でしょう?」
「えぇぇ……最後の一文、それでいいんですか……?」
「当然。今回の遊びはそう言う趣旨だからね。まぁ、本人たちはシャレにならないと思うけど」
「あれね。残虐性十分ってやつね!!」
「うん。どこから突っ込めばいいのか分からないね。問題はあんまり間違ってない所だ」
「そこは間違っていてほしかったです!!」
内容を聞いていて、悲惨な現実が襲い掛かるであろう人物に内心で無事を祈りながらも、必死で間違いであってほしいと思ったサンタジャンヌ。
「それで、これを私が書けばいいのね?」
「うんうん。ビデオと手紙、どっちにしようか考えたけど、あのメンバーならたぶん手紙の方が良いんじゃないなぁって」
「ふぅん? 全員は分からないけど、楽しそうね! 張り切って書くわよ!!」
「あの、私もこれを……?」
「いや、そっちはナーサリーに任せて、ジャンヌはこっち」
「……なんですかそれ」
オオガミが取り出したのは、大きなハリセン。
何となく、普通のよりも頑丈そうなことに気付き、一体何に使うのかと考えるサンタジャンヌ。
「これはねぇ……ちょっと人には言えない製法で作られた特製ハリセンだよ!」
「阿保言うでないわ。なんの変哲もない普通に頑丈な紙じゃろうが」
「まぁ、そうなんだけど。そう言う夢の無い事を言うのはどうかと思うよ?」
「儂もそろそろ疲れて来たんじゃよ……儂もそっちやって良いか?」
「いや、終わったならいいんだけど……ってか、年末に間に合えばいいか」
「うむ。間に合うし間に合わせるから儂はそっち行くぞ」
「ハリセン……使い捨てなんですかね……?」
「使い捨てじゃったらこんなもんですまぬわ。魔術強化で誤魔化して、使うたびに修復しつつで有効活用するんじゃよ」
オオガミが取り出してきた紙を折りつつ、ノッブ達はそんなことを話す。
「あぁ、それと、当たると曲がる柔らかい棒も用意してて、そっちが本体。ハリセンは壊れた時の予備だよ」
「なるほど……じゃあ、ちゃんとした道具はあるんですね……」
「うむ。まぁ、流石に壊れはしないと思っとるんじゃが……道具の扱いが雑な奴の手に渡るとぶっ壊れそうな感じがするからのぅ……」
「一周回った信頼ですね……」
絶対に欲しくはないですけど。と付け足すサンタジャンヌ。
そうじゃよね~。と呟くも、お前が筆頭だよ。と突っ込まれそうなノッブは、平然とハリセンを作り続け、オオガミは何とも言えない表情をしているのだった。
一体誰が犠牲になるのか。それは神のみぞ知る……年末の奴、まだ書いてないなぁ……(震え