「さて……儂の番じゃな……」
「ふふふ……さぁ、引くといいよノッブ」
ラストワン。ノッブはこれさえ当てれば勝ち。しかし、オオガミもただでは負けるつもりはない。
なお、エウリュアレ、メドゥーサ、オオガミ、ノッブの四人で始めて、エウリュアレとメドゥーサが平然と勝利したところから、徐々にノッブとオオガミの雰囲気は剣呑になって行った。そして、現在に至る。
「ふむ……確率は二分の一……と思うじゃろ? 残念じゃったなマスター。儂はすでにカードの癖を覚えとったんじゃよねこれが!!」
「なんて迷惑極まりない事を覚えているのか!! チートだよね!!」
「ふはは!! 残念じゃったな!! ってことで、儂の勝ちじゃぁ!!」
勢いよくオオガミの手の中のカードを引く。
だが、次の瞬間、ノッブの表情は絶望に染まる。
「な……なんじゃと……? 儂の読みは完璧じゃったはず……」
「ふふふ……ノッブは一つ大きな読み違いをしてる……そう、こっちだって考えるのさ!! 細工の一つくらい、何とかするのさ!!」
「まさか細工までするとは思わなかったけどね!? というか、どうして儂の時だけなんじゃよ!?」
「えっ……それはほら、ノッブはそのへんさっぱりしてるし。エウリュアレは妙に根に持つし」
当然とでも言いたげに、最後の一枚を引くオオガミ。見事、三位はオオガミだった。
「ふむ。とりあえず、マスターが儂を過小評価しとる事は分かった。覚えとれ? 絶対いつかやり返すからな」
「うぅむ、戦国武将に恨まれるのは少し命の危機を感じるのですがそれは」
にやりと笑いながらノッブに言われ、一体何をされるのかと不安になるオオガミ。
「姉様。他には何かするんですか?」
「そうねぇ……ねぇマスター? 次は何をしましょうか」
「おっと、現在命の危機に瀕しているマスターにそれを聞くのか女神さま。良いでしょう良いでしょう。じゃああれだ。七並べしようか。終わったら別のことして遊ぼうか」
「ふむ……まぁ、ルールを決めてからじゃな。ローカルルール案外あるしな」
「そうね。あ、今回は私が切りたいわ。やらせてちょうだい」
「姉様。意外と鋭いので気を付けてくださいね」
「えぇ、分かってるわ。というより、トランプで指を切るほど器用じゃないわよ……」
「まぁ、エウリュアレはこれくらいで怪我しないよ。というか、普通怪我しないよ。漫画とかでトランプで物切る人いるけど、あれは普通に才能だと思うよ……怪我するのとか、更にレアものかと……」
「ま、普通に手を切るかと思うようなのもあるんじゃけどね!」
エウリュアレはシャッフルしながら不満そうな顔をする。
その表情を見て、メドゥーサがオオガミ達を睨みつけ、二人は苦笑いになって黙るのだった。
なんとなくトランプしたかった気分。
とりあえず、エレシュキガルピックアップまでに石を集めねば……