「帰ってきたぞー!!」
「「遅い!!」」
休憩室の扉が開くと同時に放たれる二人の蹴りは、見事にオオガミの腹部に叩き込まれ吹き飛ばす。
隣にいたエルキドゥが咄嗟に鎖を網状に出して受け止め、衝撃を緩和する。
「ノッブ。また、暴れてるのかい?」
「姉様。流石に帰ってきたばかりのマスターにそれは辛いと思うのですが……私ならともかく、マスターは人間ですので、今の姉様の蹴りなら殺せる可能性が高いです」
同じく隣にいたメドゥーサも合わさり、それなりに本気で止めに入る。
だが、今日の二人はいつもより強気だ。
「なんじゃいなんじゃい。儂らはひたすら寝こんどったんじゃ!! しかも、治ると同時に一気に気温が下がるとは、儂、普通に死ぬかと思ったわ! 夏からの冬! 気温差激しくて病気が悪化するじゃろ!!」
「メドゥーサ。私を止めるなんていい度胸じゃない。この前は結局遊んでうやむやにしたけど、今日は本気で戦ってもいいのよ レベルの差を見せてあげるんだから」
ノッブはらしいことを言っているが、エウリュアレに関しては言い訳をするのも忘れ、メドゥーサに矛先が向いていた。
メドゥーサからすれば、相性で有利なうえにレベルの差も10しかないため、実質ハンデを負ってるのはやはりエウリュアレだと言いたいが、言い出せない状況である。
「そう……ノッブの言い分は分かった。でもそれは向ける矛先が違うだろう……?」
「姉様……私は止めましたからね?」
「ふはは!! やるか? やるんか? エルキドゥ!」
「格の違いを見せてあげるわ、メドゥーサ!」
病み上がりハイテンションだと一発で分かる二人。
もはやオオガミの事は忘れ去られていた。
「うぅむ、最近思ったんだけど、マスターの存在感が一番無いんじゃないかな」
「あはは。でも、楽しそうじゃないか」
「マーリンには言われたくないね」
「本当に僕に辛辣だね君は」
毎度、自分が何をしたのかと首をかしげるマーリン。確かにここまでほとんど役に立っていないが、ここからである。周回が始まってからがマーリンの本領発揮と言うところだ。
「つまりはあれですね。これからはサンタタイムということですね!!」
「うんうん、君はある意味一番素直だよ。清涼剤みたいなものだね。ナーサリーや茨木みたいにさりげなく攻撃を仕掛けてこない辺りが」
「? だって、マーリンさんを倒しても美味しくないじゃないですか。サンタパワーは、プレゼント欲する人と、美味しい素材を落とす魔物にしかぶつけませんよ?」
「うん。知りたくない真実だったっ!」
純粋に言っているところが、また恐ろしい。
マーリンは静かに泣くのだった。
ここのマーリンいつも泣いてるな……誰か救済してあげてもいいのでは……