あれ? サーヴァント全退去ってことは、年末イベントご破算?(準備も完全に終わってはいませんでしたし、たぶん無理かと)
クリスマスパーティーも終わり、片付けや掃除を終わらせた後に座へ帰っていく英霊達。
エウリュアレが帰るのを渋ったりジャンタ達が暴れたりしたものの、最終的にはホームズとダ・ヴィンチちゃん以外が全員帰ってしまった。
だが、座に帰る前に、ノッブはマスターに一本の鍵を差し出して、工房へ向かえと言った。
オオガミは、一体何が出てくるのかと、楽しみ半分不安半分でノッブの工房へと向かっているのだった。
「……でも、ノッブが渡したいようなものって何さ」
「さぁ……ノッブさんは、何気に掴みにくい人でしたからね。何を考えてるのかまでは流石に。爆弾とかだったら困りますよね……」
「うん。俺はともかく、新所長とかは一発で消し飛ぶよね」
「はい。先輩も粉微塵になりますので、お間違い無きよう。普通に致命傷ですからね?」
「いやいや……魔神王とかビーストとかと生身でやりあえるようなマスターに勝てる爆弾なんて、そうそう無いよ」
「先輩。その冗談はどうかと思いますよまぁ、宝具を受けたり避けたりしてるので、否定しきれないのが問題ですが」
自他共に認める頑丈さ。多少の攻撃で沈まないマスターなだけはあるのだ。最近の一番大きい怪我は腸を素手でかき回されたことです。とドヤ顔で言い張っちゃうくらいには頑丈だ。
「というか、一番困ってるのはさ……年末というか、大晦日にやろうと思っていたイベントが丸々潰れたことだよ」
「あぁ……サーヴァントの皆さん、帰ってしまいましたからね。ところで、何をする予定だったんですか?」
「うむ。マシュには明日伝えようと思ってたけど、計画が破綻しちゃったから、工房に着くまで語ろうか」
「一体どんなことだったんでしょう……楽しみです」
ワクワクを全面に出して隠そうともしないマシュに、オオガミは楽しそうに語り始める。
* * *
「――――てな感じで、最後は花火で締め括ってみようかと」
「なるほど……でも先輩。一つ突っ込みたいのですが、どうして私がかなり出てくる上に台詞が多くあって、伝える予定が明日だったんですか? 覚えられないと思うのですが」
「セイレムの時の活躍を見て、普通に覚えられると思うんですが。配役全員の立ち回りと台詞を全部覚えていた時点で大丈夫でしょうが」
「あの時は着いていくことに必死だったと言いますかなんと言いますか……」
「うぅむ、複雑なのか……っと、着いたね」
「あ、ここなんですか?」
どう見てもただの壁だが、一定の順番で、ただの段差としか思えないようなボタンを押すと、開く仕組みの仕掛け扉。
初期の頃にオオガミがエルキドゥと一緒に突撃したせいで場所バレしているので、その後に改装を繰り返して今の形になったわけだ。
ちなみに、設計上ではヘラクレスの宝具ならギリギリ壊れないほどなので、かなり頑丈――――というか、実質シェルターに変わっている。
「うん。本気でカモフラージュされてるけど、何度か一緒に通ったから覚えてるよ。ここを降りればすぐ――――って、そう言えば、マシュに教えるなって言われたような……」
「ちょっと待ってください。じゃあもしかして今の今まで私がこの場所が分からなかったのは、皆さんが巧妙に隠し続けていたからなんですか?」
「まぁ、若干それもある。後、普通に聞かれなかったし。教えるのも難易度高いし。ボタンは一個でも押し間違えるとやり直しなのに、カモフラージュボタンが正解の真横にあって押し間違えが多発するし」
「えぇ……それ、本当に開けられるんですか?」
「慣れるのに1ヶ月はかかったよ。ノッブは平然とやってたけど」
自分でも出入りが面倒そうだよね。とオオガミは言うが、悲しいことにこの壁は霊体化すれば普通に抜けられるため、実際に苦労するのはサーヴァント以外だったりする。
サーヴァント対策はもちろんあるが、その作動と解除法を知っているのはノッブとBBだけである。効果としては入れなくなるだけなのだが。
「さて、そんな事は置いておくとして、開いた状態がこちらになります」
「簡単に開きましたね……全然苦労しているように見えないのが不思議です」
「何度もやって、慣れればこうなるよ」
「そういうものでしょうか……」
そんな事を言いながら階段を降り、たどり着くノッブ工房。
作業のやり途中だったのか、それとも片付けを面倒臭がったのか、工房内は物が散乱していたが、いつもと比べたら綺麗な方だった。
「さて……鍵を使う場所かぁ……まぁ、一番奥にしまってた箱のなんだろうなぁ……」
「あの、何で隠し場所を知っているんですか? ノッブさんが隠してたんじゃ……」
「そうでもないけどね。目の前でやってたし」
「そうなんですか……」
マシュにジト目で見つめられても、欠片も動揺しないオオガミは、正確に隠し箱の在処を暴き、取り出す。
「さてさて……一体どんなお宝が入っているか。楽しみだね」
「トラップには気を付けてくださいよ?」
「大丈夫大丈夫。大抵のトラップならなんとか出来るし。んじゃ、開けるかな」
オオガミはそう言うと、箱の鍵を開け、蓋を開く。そこには――――
『ハズレ』と共に、ノッブがバカにしてるような絵が書かれていた。
一瞬箱を投げそうになるが、そこはオオガミ。煽られてすぐに激情するような性格ではない。
例え紙を粉々になるまで切り裂いていても、決して怒っていたりはしないのだ。
「うん。まぁ、ノッブだからこれくらいの可能性は考えておくべきだった。まぁ、二重底なんだよね。きっと」
オオガミはそう言うと、側面と底の間に爪を入れ、引き上げる。
そこには――――
それほど多くないQPと、一通の手紙が入っていた。
「……手紙、ね。まぁ、後で開けようか。とりあえずQPだけはもらっていこう」
「せっかくですし、ここで読んでいけば良いのでは?」
「いや、もう少し後でね。今読むと、片付けに手がつかなくなりそうだし」
「そうですか。じゃあ、ここはこのまま残せると思いますし、このままで。では、片付けに戻りましょう」
「うん。行こうか」
二人はそう言うと、部屋を出るのだった。
珍しくしんみりした感じの今回。というか、皆が帰ってくるまではこの雰囲気が続くんじゃないかと。
えっ、今日公開されたのだと独房内だろう? 何を言ってるんですか。それは27日って書いてありましたよ。