「さて。明日が今年最後な訳ですが、後輩ちゃん。実は今まで人理修復で見れなかった笑ってはいけないシリーズを今年こそは見たいわけですよ。なのに、こんな部屋なのですが、どうすれば良いと思いますか」
「あの、録画しておけば良いのでは……?」
真剣な表情で言うオオガミに、マシュは困惑したまま思ったことを言う。
しかし、すでにそれを実行したオオガミは、真剣且つ哀しみに溢れた表情で、
「ここ、テレビ局入ってない……」
「……ここ、一応僻地で極秘エリアですもんね……」
テレビがあったりするが、実際電波が入らないので、BBが弄ったり、ノッブがゲームしたりするくらいだ。
刑部姫は自室にデスクトップを持っていたが、あれは刑部姫の私物である。召喚したら付いてきた事から、間違いはない。更に言えば、刑部姫が帰るときに一緒に消えたのも、理由としては十分だろう。もう無いし。
「うん、まぁ、なんだ。給料も入ったし、Blu-ray買えば済む話なんだけどさ……こう、共有できない寂しさはあるよね……」
「先輩……」
「それに、ネットを覗くとネタバレが豊富にあるところとか」
「それはネットを見るがまず間違ってるかと。そういう場合は自分が実際に見るまではネットを覗かないのが一番ですよ」
「うぅむ……仕方あるまい。マーリンお兄さんが帰ってきたら語ってもらうとしよう。だって、見てるだろうからね!」
「活用法がどこかずれてますよ先輩!! 後、それだとネットを見るのとなんら変わりません!!」
使えるならば、グランドキャスターですら使って番組の内容を知ろうとするオオガミ。
突っ込みどころが多すぎる活用法と、本末転倒というダブルアタックで、マシュはもう疲れてきた。
こんな、ボケまくる先輩と四日も同じ部屋で過ごしているのだ。突っ込み疲れても仕方がない。
問題があるとすれば、『突っ込まない』という選択肢が欠けているところか。
「まぁ、その問題はどのみち帰ったら解決するから大丈夫だとして、疑問なのは、明日解放されるのかって事だね。Aチームのマスター達も心配だけども、何よりもこの独房状態の謹慎室で大切な年終わりを迎えたくはない」
「そうですね……確かに、このままだと出してくれる気がしませんからね……せめて食堂で年を明かしたいものです」
「うんうん。まぁ、やる気を出せば外に行けなくはないんだろうけどね」
「ややこしいことになりそうですから、止めてくださいよ。先輩」
「流石に皆の命を危険にさらしてまで外に行こうとは思わないけどさ。というか、出たとしても戻ってくるしかないし。なにせ、ここにどうやって来たかを知らないからね!」
「あ~……そうですねぇ。ドヤ顔で言うことではないですけど、確かに分からないですよね……」
オオガミの意見に、頷いて肯定するマシュ。
「さて……では、マシュ。明日解放されることを祈って、今日はぐっすり寝ようか」
「はい。寒くならないように、ちゃんと毛布を掛けて寝てくださいね。先輩」
そう言って、二人はそれぞれのベッドで横になる。
すっごい今更なこと言いますね。この四日間。この部屋に……
ダ・ヴィンチちゃんと職員がいますからね!
うん、まぁ、悲鳴案件をいくつかやってたような気がしなくもないんですけどね。これ、もしかしなくても、やらかしまくってるね。オオガミ君。