「なんで…なんで上がらないんだ…!!」
「あの、その…SSRですし、仕方ないんじゃないでしょうか…」
休憩室で頭を抱えて呻くオオガミを励まそうと頑張るマシュ。
何があったのか。それは至極単純で、未だに一度も霊基再臨が出来ないネロへの嘆きだった。
現在レベルは37。後13も足りず、林檎はイベント用にとケチっているためあまり伸びていなかった。
「ぐぬぬ…こうなれば、いっそのこと林檎を使うべきか…」
「先輩。さすがにそれはダメです」
「あ、はい。ごめんなさい」
微笑んで却下されて謎の恐怖を感じたオオガミは、思わず反射的に謝った。
「はぁ…全く。ネロさんが来てくれたからよかったですけど、そもそも、なんで聖晶石を衝動的に回すんですか」
「仕方ないよ…衝動には誰も勝てないんだ」
「もうっ! 抑制はしてくださいよ!」
「仕方ないよ…マシュが聖晶片を『カッキーンッ。カッチーンッ』ってしちゃうようなものだよ…」
「い、いえ、その、アレは…」
動揺するマシュに、オオガミは微笑んで、
「大丈夫。みんな分かってくれるから。大丈夫だよ。マシュ」
「~~~~っ!! 止めてくださいっ…! それ以上は…ダメですっ…! つい、出来心だったんです…!!」
「ふふふ。良いのだよ? マシュ君。これを広めてしまっても」
「そ、それは止めてくださいッ! 本当に、止めてください…!」
「ふふふ。ならば、私が聖晶石を使う事を黙認するのだよ…!!」
「あ、それは話が別です」
寸前まで恥ずかしさに顔を赤く染めていたのに、一瞬で真顔になるマシュ。
流石に世界を救った英雄も、頼れる相棒には勝てないようだった。
「とりあえず、イベントが始まるまでは石も林檎も預かっておきますからね。先輩は、私が見てない所で使っちゃいそうですし」
「酷い偏見だよね!」
「実際そうじゃないですか」
「はぅっ! 後輩に言われてはどうしようもない…!!」
「もう。分かってるなら直してください。そして、種火は自然回復したAPのみでやってくださいね」
「うぐぐ……仕方あるまい。諦めよう…」
「最初からそれでいいんです。さ、回収しますよ。先輩」
「は~い……」
マシュはにっこりと笑いながら。オオガミは渋々と言った様子で、休憩室を出て行く。
そして、それを見ていた影があった……。
「マシュ……もはや母親じゃろ」
「まさか石と林檎を自分が持って行こうとするとか、誰が考えるのよ」
「そなたら……いつもそんな会話をしているのか…?」
案の定、ノッブとエウリュアレの二人と、新たにネロが加わっていた。
「いつもじゃないわい! というか、儂の居る時にマスターから来るんじゃ!」
「そうよ。私も、たまたま来た時にマスターがいるだけよ。狙ってきてるわけじゃないわ」
「そ、そうか…」
冷静に考えると、自分も同じようなことをしているので、そこまで深くは突っ込めないネロだった。
「まぁ、今日はもう帰るんじゃがな」
「私はもう少しお茶を飲んでから部屋に戻るわ」
「余も部屋に戻るかの」
そうして、3人は解散するのだった。
という事で、やはり一日では再臨出来ないか…ネロ様…!!
林檎と石はマシュに預かってもらえば確実に使いませんよね!(フラグ)