「一日一回、ちょっとずつレベルが上がっていくわ……」
「ふはは。一日二箱のボックスから出る『×1』金種火と、銀種火渡してるからね。上がるはずだよ。うん」
レベルが上がってご機嫌なアビゲイルと、蒼白顔色で笑うオオガミ。
パッと見の顔の白さはアビゲイルが勝っているような気がしないでもないが、それは置いておく。
「あら、マスターは体調が悪いのかしら?」
「そういう訳じゃないけどね。ただ、今いるメンバーは、客観的に見るととんでもないメンバーだよなぁって思っただけ」
「そうかしら……?」
オオガミがそういうのは、ある意味当然ではある。
BBは見た目や態度に反して電子戦では最強レベルのAI。最強の悪神の名を持つアンリマユ。そして、外なる神の写し身たるアビゲイル。
過去に戦った三体のビーストにも引けを取らなそうな三人が、今現在イベントを周回しているという、ある意味異質な状況。人類を破壊しそうなメンバーが人理を救うという皮肉の聞いた話だ。
「大丈夫よマスター。私はマスターの事を裏切らないわ。マスターが人理を救ってこいって言うのなら救うし、壊せと言うのなら……盛大に壊すわ。だからマスター。私を置いていかないでね?」
「もちろん置いていかないけども、なんとなく遠回しな脅迫の気がしてるんだけど?」
「嫌だわマスター。私はそんなことしないわよ。むしろ、言われたことをやるだけですもの」
ふふふ。と無邪気に笑うアビゲイルに、苦笑いで返すオオガミ。
そんな二人に近寄る影が一つ。
「やぁお二人さん! 仲が良さそうで結構なことで! オレはこの荷物持ちの役目が無くならないかと今か今かと待ち受けてるんだが、そこら辺どうだいお嬢さん」
二人の肩を背後から掴み抱き寄せるアンリ。
しかし、突然のことだったにも関わらず、アビゲイルは平然と答える。
「まぁ。それは私が決めることではないわ。マスター決めることよ?」
「おっと。まさかマスターの裁量に投げ掛けるとは。どうやら聞く人を間違えたようだ。その辺そこの旦那はどう思うよ」
不意に背後に問うアンリ。
その視線を追って二人は振り向く。
「ふん。我が共犯者がそれを望むのならば、するのが当然だろう?」
そこにいたのは巌窟王。
彼の答えを聞いたアンリは苦笑いになり、
「あちゃあ。まさかアンタもそっち側か。こりゃ、荷物持ちは続きそうだね。参ったなこりゃ」
「別に貴様が動くわけでもなかろうに。荷物持ち程度、大したことでもないだろう」
「はいはい。わぁかってますって。んじゃ、マスターは引き続きオレを戦わせないようによろしく~っ!」
それだけ言って、アンリは消えていく。
「う、うぅむ……今のはなんだったのか。どう思いますかアビーさん」
「私はとても面白そうな人だと思ったけれど。そちらのお兄さんはどうかしら?」
「……あまり、奴といないようにした方が良いと思うがな。まぁ、共犯者が今のままで良いと言うのなら、それを否定することはない」
「ふむ……じゃあ、今のままで良いか」
うんうん。と一人頷くと、オオガミは気持ちを切り替え、
「じゃあ、周回行きますか」
そう言って、逃げていったアンリを含めたメンバー集めるのだった。
アンリは今回の不憫役。荷物持ちはイベントが終わるまで続くと思うよ。アンリ……