「ついに明日から百重の塔攻略です。だけど、一つ気になることが」
「はぁ……? 何があったんでしょう?」
一人、真剣な表情でそんなことを言うオオガミに、首をかしげつつ聞くマシュ。
「うむ……この部分を見てほしい」
「イベントの概要ですね……これがどうか……あれ、レイシフト……?」
「うん、そういうこと。つまりこれは、実はイベントをすると謎時空に飛ばされる可能性だよ」
「今まで適当に流していた話題をやっちゃうんですね先輩……」
ある意味、触れてはいけない案件。しかし、オオガミは止まらない。
「つまりはだよ。このカオス空間なら、平然と他のサーヴァントいても良いんじゃないかと思ったわけです」
「は、はぁ……いえ、先輩のおっしゃりたいことは分かるんですが、それで良いんですか……?」
「……ノーコメントで」
目を逸らすオオガミ。マシュは不安になる。
「ま、まぁ、向こう側のみなら良いんじゃないかな……?」
「それなら良いと思いますけど……大丈夫ですかね……」
「マシュさんは心配性ね。きっと誰も気にしないわ」
ひょっこりと現れたアビゲイル。本日もちゃんと服を着ていた。
マシュは複雑な表情になると、
「アビーさん……でも、先輩の場合、なんだかんだ言って連れてきそうなので……」
「なんという信頼の無さ。一周回って泣きそうだよ」
「そうね……連れて帰ってきてしまったら、ただでさえも狭いのに、もっと狭くなっちゃうわ。霊体化をすれば良いけれど、それだとマスターと触れ合えないものね」
「はい。流石に人が増えすぎるのも問題ですしね。そもそもマスターの魔力が持たないと言いますか、カルデアと比べたら圧倒的に魔力が足りないと言いますか」
要するに、保っていられないわけだ。
アビーは少し考えると、
「じゃあ、ダメね! 私はマスターのそばを離れるつもりはないもの!」
「はっきり宣言しましたけど、ついさっきまでいませんでしたよね?」
「そんなことはないわ。ちゃんといたわよ」
満面の笑みでそう言い切るアビゲイル。
マシュはその笑みに苦笑いで返し、
「まぁ、なんにしても、魔力が足りないわけです。イベント中ならよく分からない謎の力でイベント空間だけならなんとかなると思うので、その時だけですからね。それ以上は延ばせませんから」
「わ、分かったよ……っていうか、流石にそこまで無理言うわけじゃないし……」
「そうしてくださいね。私は明日のために準備してきますので」
「りょ、了解。こっちも準備しておくね」
そう言って、マシュは別れたのだった。
私が気になるのも仕方ないと思う。だって、エウエウ復活チャンス……!!