「ふあぁ……もう六十階なのね……」
「うん。空に近くなった。明日くらいにはたどり着けるかなぁ~……」
「くぅ~……オレがボロボロにやられてる間に楽しそうなこって。こちとらこれから温泉だっつの」
先程まで倒れていたアンリは、ボロボロの状態で起き上がって、温泉に向かうために降りようとしていた。
アビゲイルはそれを見て、
「言ってくれれば、下ろしてあげたのに。えい!」
触手で器用に掴み、アンリを温泉直上付近まで持っていくと、そのまま下に降ろしていく。
「待て待て待て待て待て! 死ぬ!! わりとこれは洒落にならん!! 死ぬ!! 一度殺されかけた方としては不安しかない!!」
「あら。じゃあ、ここで放す?」
「悪魔かテメェ!! いや悪魔だ!!」
「ふふふ。文句は戻ってきたら聞いてあげるわ。じゃあねアンリ」
そう言って、騒ぐアンリを5階ほどの高さで投げ捨てるアビゲイル。
水柱が上がっているのが見えたので、本当に落としたと気付いたオオガミが、苦い顔をしている。
「ふふっ。これで私とマスターしかいないわ」
「うん。まぁ、そうなんだけど、残念なことに、通信は繋がると言うか、マシュは見てると言うか」
「マシュさんなら良いの。だって、私はお話がしたいだけだし。マスター。夜風は冷えるから、中に入りましょう?」
アビゲイルに言われるままに入り、それと同時にアビゲイルが扉を全て閉める。
予め点けておいた蝋燭だけが頼りの空間だ。
「ねぇマスター。終わったら、パンケーキを食べたいわ」
「パンケーキくらいならそんな言い方しなくても普通に作ってあげるのに。どうしたの突然」
「別に、何かある訳じゃないの。ただ、なんとなく、次の場所にたどり着いたら、私の敵がいる気がして」
「次の場所……次の階ってこと?」
「そうじゃないわ。拠点に着いて、m前の人たちが召喚されたらよ。だから、マスターを盗られないようにしなくちゃ」
なんとなく、嫌な予感がしてくるオオガミ。
今のセリフを聞いたら、一部のサーヴァントが荒ぶりそうな話だ。清姫とか、静謐とか、頼光とか。
ただ、不思議とエウリュアレは全く気にしないで、いつものように絡んでくる気がした。
「マスター、今他の人のことを考えてたの?」
「いや、別に? でも、とりあえず敵って感じるような人はいないんじゃないかな?」
一部は殺意を持って襲い掛かってくるだろうが、半分はバーサーカーだと思われるので、アビゲイルなら問題ないと思うオオガミ。
アビゲイルは面白くなさそうな顔を一瞬した後、
「まぁ良いわ。ねぇマスター。今日はカルデアのお話をしてちょうだい。良いでしょう?」
「ん~……明日も登るから、あんまり長くは話せないからね?」
「えぇ、それで良いわ。お願いね、マスター」
アビゲイルに言われて、オオガミは何を話そうか少し考えた後、話し始めた。
うぅむ、攻略が終わったら温泉に降りるか……そろそろ二部始まってほしいんですけど、たぶんバレンタイン先ですよねぇ……