「あれ、先輩はどうしたんですか?」
アンリを見つけたマシュの第一声はそれだった。
そんなマシュの声に首をかしげたアンリは、
「そっちに行ったと思ったんだけどな? なんせ、マスターはアビゲイルに会いに行ったんだからな。つか、アビゲイルはどうしたんだ?」
「アビーさんは途中で研究所の受付係に任命されて行ってしまったので、そこで別れました。なので、先輩がいるであろうこちらに来たのですが……」
どうやら、運悪く入れ違ったらしい。そう気付いたアンリは、
「おいランスロットさんさぁ……どうおも――――あれ? いねぇ」
「どうかしたんですか?」
後ろにいるはずのランスロットに声をかけて振り返って、いつの間にかいなくなっていたことに気付く。
何処行ったんだ。と考えるが、消えた原因はなんとなく予想がつく。
仕方ないとは思いつつも、そういう態度も一役買っているのではないかと思うアンリだった。
「あ~……いや、なんでもねぇよ。まぁ、どっちにしろ、マスターはいねぇよ。探しに行ってみるか?」
「そうですね……ちょっと探し回ってみましょうか」
そういうと、二人はオオガミを探し始めた。
* * *
その頃オオガミは、アビゲイルを肩車して全力疾走していた。
「ま、マスター!? どうして走っているのかしら!?」
「そりゃ、走りたいほどい嬉しいからかな!!」
空中庭園をひたすら走っていたオオガミだが、ふと、歩き始める。
「きゅ、急に走ったり、歩き出したり……どうしたの? マスター」
「いや、一気に開拓したから、見覚えの無いものもあるんじゃないかと思って。明日は施設の見回りをしてみようか」
「そうね。走っている間に色々出来ちゃったから、もう一回最初から見たいわ!」
「了解。じゃあ、明日は皆と一緒に施設の見回りだね。一日で見回れる量じゃないと思うけど、数日かければ大丈夫かな」
「えぇ。でも、きっとその間にも増えると思うから増えた施設もお願いしたいわ」
「もちろん。施設の見回りは必要なものだし、怒られないと思うしね」
チョコ生産をサボっているわけではなく、点検という名目で見回れば何も言われないという自信があった。許可されなくても礼装身代わり逃走するのだが。
「あぁ、楽しみねマスター。どこから見て見ようかしら」
「作った順番から見て行こうかなって思ってるけどねぇ……アビーは見て見たいところがあったりする?」
「ん~……施設と言うよりも、ゴーレムさんを見てみたいわ」
「う~ん、夜に警備しているゴーレムさんを見てるのもいいかもしれないね。巡回ルートの確認も出来るだろうし」
「なんか、お仕事と一緒になっちゃうかもしれないわね?」
「あはは……さて。じゃあ、マシュ達を探しに行こうか」
「えぇ!! 行きましょ――――って、なんで走るのおぉぉぉぉぉぉ!!! きゃああぁぁぁぁぁ!!!」
走り始めたオオガミに驚き、叫びながらもアビゲイルはしっかりとオオガミに掴まるのだった。
走り出すオオガミ君。アビーのチョコは大事にしまっておこう……鑑賞するけど。
あと、あの話を見て、且つピジョンレポートのアビーの話を見たら書かざるを得なくなってしまった……アレはちょっと、書きたくなる欲が。
正直、アビーの受付姿をめちゃくちゃ見たくなったのは私だけじゃないはず。