「この農園は好きじゃないわ! 皆の声がほとんど聞こえないし、この声を聞いちゃうと倒れちゃうもの!!」
「声は聞こえないけど、言おうとしてることはよく分かる。正直、叫ぶ前に倒せばいいと思う」
「全く聞こえないですけど、先輩が無茶なことを言ってるのは分かります」
「……なんか、オレ以外意志疎通出来てねぇか?」
正確にはアビゲイルも出来ていないのだが、アンリは気付かない。
マンドチョコラゴラ農園。一つの悲鳴で多数死亡する凶悪なチョコ植物育成場。耳栓は必須アイテムだが、意思の疎通が図りにくいというのが現状だ。
今でさえ、オオガミは読唇術で、マシュは長年の経験則で言葉を読んでいるくらいで、アンリもアビゲイルも、一切会話が出来ていない。
「マスター! ここだとお話出来ないわ! 他のところに行きましょ!」
「まぁ、そうだよね。こんな音響兵器の近くでのんびりのんびり会話できる精神は持ち合わせてないや。っていうか、念話をすっかり忘れてるなこれ」
「今更ですね。というか、使う機会が無さすぎたのも問題かと」
「平然と話続けてるだろこの三人。オレ全く聞こえないんだけど。え? 移動するの? いや、まぁ、助かるけど。耳栓の効果は確かだし、良いのか……?」
アンリは微妙に納得いかなそうな表情をしていたが、離れることにあまり異論はないらしい。
そうして、三人は農園を離れる。
* * *
死チョコ魔術研究所。何処をどう切り取ってみても、ただの危ない研究所でしかない。正直、誰がここで働こうと思うのかと考えるくらい怪しい雰囲気だ。
実際、働いているのも、ほとんど見た目中身共に危ない人だ。
「なんか、ここは面白そうよね。チョコの蘇生って、不思議な響きよ」
「全く理解出来ないレベルだよね……そうか、死霊魔術はそんなところにまで手を伸ばしていたのか……食材の魂って、恐ろしいなぁ……」
「なんとなく、食べ物の恨み的なそれの雰囲気ありますよね」
「倍返し以上が普通だな。具体的には、他人のプリンを食ったら三日間断食させられ、目の前で美味しそうに自分が買ってきたプリンを食べられる刑ってくらい」
「倍ってレベルじゃねぇぞそれ……!!」
倍返しと言えばアンリということで話始めた例え話に、うっすらと恐怖を感じつつ突っ込むオオガミ。心の底から突っ込んでいたりする。
何か心当たりでもあるのだろうか。
「というか、このチョコって美味しいのかな……」
「どうかしら……見ていて面白いけれど、食べるのはちょっと勇気がいるわ」
「私もちょっと抵抗がありますね……」
「別に不味くはねぇぞ? まぁ、食い過ぎは良くねぇけどな」
「それは当然だけども。ってか、不味くはないって、中々グレーな発言で……」
「気にすんなってマスター。ほれ、食ってみ?」
「え、遠慮しとく」
妙に良い顔でチョコを押し付けてくるアンリに、オオガミは苦笑いしながら断るのだった。
ようやくストーリー終わったので、聖杯君まで見に行ける……でも、まだチョコは3分の2あるんですよね……遠い……
しかし、死チョコは美味しいのか否か。ちょっと気になる……