「全く……再召喚されて初の命令がマスターの捕縛だとは思わなかった。というか、なんでそんなことになるのか」
「それに素直に従うエルバサさんもどうかと思う……」
「オレが一番の被害者だと思うんだ……だってほら、何もしてないし……」
「マスターを止めなかったでしょ?」
「止めないと一緒に捕縛されるのかぁ……」
アビゲイルとエルバサに見張られているオオガミとアンリ。
全身ぐるぐる巻きにされて天井から逆さ吊りされているとしても、関係無い。何せ、抜け出した前科があるからだ。
ちなみに、アンリをイケニエに逃げ切ろうとしたオオガミだったが、突如現れたエルバサに、成す術なく捕まったという経緯があったりする。
「それにしても、なんで抜け出せたのかしら……」
「そうだな……服の――――例えば、袖の中に刃物を仕込んでいたとかだろうか。証拠として、縄が鋭利なもので切られた後がある」
「なるほど……エルバサさんはどうした方がいいと思う?」
「それを聞かれると困るのだが……そうだな。ワイヤー等で縛るのはどうだろうか」
「う~ん……そうね。そうしましょう。マシュさんに言って、貰ってくるわ!」
そう言うと、アビゲイルはパタパタと走っていく。
それを見送ったエルバサは、マスターに視線を戻すと、
「一体何をしたのか、聞かせてもらおうか。なんで逃げるようなことになっていたのかを」
「……エルバサさん再召喚の時に消費した石とか呼符とかは無断使用だったので……」
「何してるんだか……マシュはそこまで資源に対し厳しくもないだろう?」
「いやぁ……確認するよりも早く回したくて……」
「バカか貴様。資源管理は必須。無断使用が認められるわけないだろう。確かにそれほど厳しくする必要は無いとはいえ、連絡は必要だ。前にいた土方という男はその辺は分かっていたのだが」
「あ~……うん、分かる分かる。土方さんもその辺うるさかったなぁ……あれ、これ切腹ものかな?」
「オイオイオイ。オレまで巻き込んで切腹とか洒落にならねぇからな!? マスターを殺すのは不味いんだから、必然的に俺だけ犠牲になるじゃねぇか!」
「すまないアンリ……」
「サクッと売りやがったこのやろう!!」
慈悲はなかった。オオガミは、アンリに向かって黙祷するのだった。
そんな殺伐とした空間に、訪れる天使が一人。
「ワイヤー持ってきたわ! って、何かしら、この雰囲気」
「おぉ、取ってきてくれたか。アンリに処罰は出来るとして、マスターはこれで縛っておかなければな……」
「あれぇ? これ、もしかして被害に遭うの俺だけなのでは?」
「ハッハァー! ざまぁねぇなマスター!! お前もこっち側なんだよ!!」
「コイツ、一気に調子乗りやがって……アビーさん、やっておしまいなさい!」
「えぇ……マスターがイタズラして捕まったのに、アンリを巻き込むのはどうかと思うわ」
「なんでこういうときに限ってイイ人ぶるんですかねこの子は!!」
「よぅし!! これでマスターはワイヤーで吊し上げじゃぁ!! 縄よりも痛いな絶対。めっちゃ痛そう。後、鉄臭くなったら近付かないでくれ」
「調子乗ってるじゃないのアンリ君……後で覚えとけよ貴様……」
「ワイヤー地獄を無事に生き残れたら考えとくぜマスター」
二人はそう言ってにらみ合いつつも、その後に降りかかる地獄の前に、何も出来ずに崩れ落ちるのだった。
イケニエ等、無意味なのだった……しかし、ワイヤーで縛り上げるのは、最悪死ぬんじゃ……?