吊られたまま一日。つい最近アビゲイルとアンリにやった行為を似たような感じで返されているオオガミ。
本日の食事は塩一つまみと水4杯。修行僧でも無いであろう食事とも言えない内容。マスターに対する仕打ちとしては恐ろしすぎた。
ちなみに、アンリはどこかへと連れ去られた。
「くぅ……めっちゃ腹減った……殺意高すぎだろ……おかしいじゃんか……」
わりと泣きそうなオオガミ。
ほぼ自業自得なのだが、本人は認めないというのが問題だった。
そんなオオガミのもとに現れるアビゲイル。その手に持っているおぼんの上にラーメンを乗せていた。
「マスター! 見て、これ!! 私のお夕飯よ!」
「なるほどぉ……で、アビー。僕の夕飯は?」
「あっ、そうそう。マスターのご飯も預かってきたんだったわ」
そう言って、アビゲイルはオオガミの下までやって来て、おぼんを置くと、その上にちょこんと乗っけてあった白い塊と水を差し出し、
「はい。塩タブレットとお水よ!」
「……誰がそれを渡せって言ってたの?」
「えっ? アンリよ?」
「アンリあのやろう次会ったら覚えとけ!!」
吊られながらも器用に暴れるオオガミ。
アビゲイルは持っていた塩タブレットと水をその場に置くと、部屋の隅の方に置いてあった机と椅子を持ってきて、ラーメンを食べ始める。
誰が作ったのかは知らないが、山盛りの野菜の上に大きなチャーシュー。麺もスープもインスタントではあるものの、その匂いは空腹の人間には辛いものであるのは確かだった
「うぎぎ……なんでこの部屋で食べるんだ……」
「マスターはそれだけしかないから、匂いだけでも楽しんでもらおうと思って!」
「悪意でやってるとしか思えないんだけど……!!」
「あら、酷いわ。マスターは私が悪い子だとでも言うの?」
「少なくとも、悪意無しでそれをやっているのなら後でお話する必要があると思うくらいには」
「まぁ。怖いわ……とは言っても、本当はダメだと思っていてやっているから、悪意があるってことなのかしら?」
「よぅし分かった。絶対抜け出して、仕返ししてやるからなアビー。覚えとけよ」
「マスターが怖い事を言うわ……でも、私は強い子よ。こんなことでめげないわ!」
「出来れば今後しないようにしてほしいな! 教育が必要ですよこのお嬢さん!!」
最近、なんだかアンリにしていたのが返ってきた気がするオオガミ。これがアンリの宝具とでも言いたそうだ。こんなことでも返ってくるのだろうか……
そんなことを思っている間に、ペロリと平らげたアビゲイルは、さっさと帰っていく。
「じゃあマスター。また後で来るわね」
「その頃までに逃げ出しておいてやるからな!」
アビゲイルはそれに対し、意味深に微笑み、去っていくのだった。
うちのアンリは宝具1だから2倍返ししか出来ないはず……!!
うぅむ、悪意の塊しかいないぞ現在のうちのカルデア……悪との人数比不思議……