「ふふふ……なんか、サナギ気分」
「まぁ。脱皮するのかしら?」
「まさに、変態ですかね?」
「うまいこと言うなぁ……マシュ……」
荒ぶり始めたオオガミに、軽く一撃入れていくマシュ。
アビゲイルは若干ついていけてないが、気にしてはいけない。
「それで、突然どうしたんです? 笑いだしたのも、なんか不気味ですし……」
「昨日から十分不気味だった自覚があるけど……はっきり言えちゃうマシュちゃんが凄いと思うぜ……チクショウ、さりげなくお茶の用意しやがって。何縛られてる人を見ながら談笑するつもり満々なんだ」
「先輩、何かと寂しがり屋なので、せめて話し相手になってあげようと言う配慮ですよ」
「うわぁ……アビーが手伝うと凄い楽そう……というか、アンリって何処行ったの?」
着々とお茶の準備をしていく二人を見ながら、話を変えていくオオガミ。
気になってはいたのだ。連れ去られたアンリは何処へ連れていかれたのかということを。
「アンリさんは……そうですね、別室にいます。ちょっと言えないですけど」
「うわぉ、不穏。さりげなくマシュが一番危ないんじゃないかと思ってきた」
「そんなこと無いですよ。むしろ、私が一番無害です」
「マシュさんが一番無害だなんて……ここまでの作戦はマシュさんが主導なのに……」
「アビーさん、それは言っちゃいけない奴です」
「あ、ごめんなさい。失言だったわ」
両手で口を塞ぎつつ、やってしまった。と言わんがばかりの表情のアビゲイル。
マシュは苦笑いでアビゲイルの頭を撫でつつ、オオガミを思いっきり揺らす。
「ああぁぁぁぁああ~………ゆ、揺らされるうぅぅ~……」
「ふふふふふふ。何もなかったことにしないとですね。一番簡単なのは、先輩の記憶を吹き飛ばす事でしょうか?」
「な、なんで今日のマシュはこんなにも殺意高いんだろう……とりあえず、酔うので止めていただきたい……」
「先輩……私だって色々あるんですよ。後始末に呼ばれたり後始末に呼ばれたり……あと後始末に呼ばれたりするんです。最近はホームズさんを引きずり回して頑張ってますけど、あの人も先輩並み、いや、それ以上に逃げるので、大変なんです。なので、手伝って欲しいとは言いませんから、せめて何もしないようにしてください。後で大変なのは私なんですよ?」
「……い、以後気を付けます……なので、その、出来ればそろそろ止めてほしいかなぁって……」
「止めるわけないじゃないですか」
「ですよね~……」
ぐるぐると回されながら、オオガミはマシュの迷惑にならないことは出来るだけしないようにしようと誓う。
そして、ストレス軽減のために、少しくらい何か手伝ってあげるのも良いな。と思うものの、どうせすぐ忘れて何かしでかすというのは、自分でも自覚があるので今日くらいは気が済むまでやられていよう。とオオガミは決め、とりあえず気の抜けた悲鳴を上げるのだった。
恐らく現状一番危険で一番苦労しているマシュさん……オオガミ君があんなだからいけないんだ……
さて……四月まで四月まで持つかどうか……