「中々、骨のあるお方ですねぇ……」
「召喚されて、その直後にこんな激戦になるとは思わなかったね……」
不敵に微笑むキアラと、苦笑いをするアーサー。
後ろにオオガミと震えるアビゲイルがいる。マシュはアンリを連れて退避済みだった。
そこへ、エルバサが到着する。
「ふむ……一体、私はどっちを倒すべきだ?」
「それは、キアラ――――向こうの尼さんだけども」
「分かった……が、まだ余裕がありそうだな。私はマスターを守ることに徹するとしよう。それでいいな?」
「そうだね。そうしてくれると助かるよ」
「うふふ。必死で戦うつもりのようですが、本音を言いますと、私は戦うつもりはないのですよ?」
「目が危ないんですがそれは」
「思い込みというものですわ。私が一体何をしたというのでしょうか」
「去年の五月の地獄を俺は忘れない……」
「私、根本的にあの人と合わないの……」
圧倒的天敵。報復の時を狙っているオオガミと、クラス相性的にも人としての相性的にも最悪としか言いようのないアビゲイルにとって、むしろ徹底抗戦の構えだ。
巻き込まれている方からすると何とも言えないが、根本的に危ない人ではあるから、ある意味捕縛は必須だろう。
「まぁ、僕からすると、君は危険な雰囲気がするからね……現状においては危険すぎるかな」
「そうですか……まぁ、自覚はありますけど、大人しくしているつもりなのですが」
「中々、信用は勝ち取れてないみたいだね。僕としてはここで大人しく捕まるのをお勧めするけど、どうする?」
「もちろん抵抗させてもらいますわ。大人しく捕まっているのも良いですが、こうやって戦うのも楽しいですから」
「ハハハ……何をしてもあまり効果が無さそうだ。僕が出来るのは、時間を稼ぐことくらいかな?」
「私から見ても、倒し切るのは難しいだろうな。というか、マスター。サーヴァントだというのなら、令呪を使えばいいだろう?」
「令呪が効くと思えないんだよねぇ……キャンセルされかねない」
「ふむ。そこまでの相手か……」
流石に令呪キャンセルされる可能性を考えると、使うのはあまり得策ではない。令呪が無くなった瞬間に襲われたら本気で打つ手が無くなるからだ。
「はぁ……宝具を使うのは、流石に問題かな。出来れば早めに逃げ場が欲しいのだけど」
「その意見には同意なんだけど、最短でも後五日かな」
「流石に、そこまで耐えきれる気がしないなぁ……」
やれやれ。といいたそうな苦笑い。だが、再度剣を握り直し、時間稼ぎは続けるようだ。
それを見たエルバサは、
「……マスターを連れだしておこう」
「あぁ、よろしく頼む」
エルバサはそれを聞くと、オオガミとアビゲイルを引きずっていくのだった。
そして、オオガミは引きずられながら思う。
「ほのぼのからかけ離れ始めたな……」
「あの人を呼んだ時点で手遅れだと思うの」
なんか、後戻りできなくなってきた……キアラさんの存在感が強すぎるんですが……軌道修正どうしよう……