「あ~……疲れたぁ~……」
「お疲れ様です、アンリさん。ところで、どうやってキアラさんを止めようとしたんですか……」
「あ? どうやっても何も、普通に逃げようとしたら捕まって、仕方無いから宝具回して殴ってを繰り返してただけなんだけどな?」
平然と答えるアンリ。発見したときは白目で倒れていたのだが、なんとか回復したらしい。
「アンリも凄いわ。よくあんな人に立ち向かえたわね」
「おぅ。見直したか?」
「えぇ。次はアンリを盾にするわね」
「うわぉ。全く嬉しくねぇ」
アビゲイルの真顔の肉盾宣言に、苦笑いで返すアンリ。
そんな二人にマシュは、
「まぁ、今は先輩が引き受けてくれていますし、気にしないで良いかと。生存能力に関しては右に出る人は少ないはずです。逃走能力とか」
「あ~……確かに、逃げるのに関しては超一流だよなぁ……ありゃなんかの補正あるわ」
「ぐだぐだ時空に似てると言いますか、何と言いますか……不思議ですね」
「えぇ、全くだわ。なんだかんだ言っても、アンリを捕まえたのよ? その力は一体どこにあるのかしら。脱出した方法も分からないし」
「なんつうか、あれだな。ビックリ人間だアレ。そりゃ、人類最後のマスターになったり、人理救ったりするわけだ。まぁ、今は人理が凍てついてるけども」
「まぁ、それ以上は触れない方がいいと思うがな。まぁ、マスターがおかしいというのは分かるが」
会話に入ってくるエルバサ。召喚されたときには既に人理は救われており、活躍する機会も無かったのだが、実はひっそりと活躍できるのではないかとチャンスを待っていたりする。
彼女はオオガミの様子を見に行ってくれていた。それを知っていたマシュは、
「エルバサさん。どうでした?」
「あぁ。マスターはいつも通りだったさ。いや全く。どうして世間話出来るのか。私には分からないね」
「うわお。世間話してるのかよ……相当な精神してるねぇ……」
「場数を踏んできたとかではなく、先輩の場合、それが素ですからね。ビックリしますよ……」
「何の話をしていたのかが気になるのだけど……」
「あぁ、聞いてきた。聞いてきたが……あまり話すようなことでもない。ごく普通の自己紹介のようなものだ。いつも通りに接することができる辺り、流石と言えるな」
「ですよね……えぇ、分かってます。よく自己紹介できるな。とか、今更ですから」
「マスター……実は凄い人だったのね……でも、私には真似出来そうにないかも」
「いや、するようなもんじゃねぇだろ、アレは」
羨望の眼差しのアビゲイルに、突っ込みを入れるアンリ。切り替えの早さは、もはや真似できるものでもないのだろう。
そんなことを話ながら、夜は更けていく。
オオガミ君がいないまったり回も良いんじゃないだろうか。と思って書いたけど、書きにくい……