「今日は何の日か……知ってますか、キアラさん」
「確か、ホワイトデー……でしたか? えぇ、知っていますとも。バレンタインデーのお返しを渡す日で、それが日本独自の風習である、ということも。それがどうかなされたので?」
「うん。どうしてそう、要らない知識があるのかは気になるところだよ。まぁ、それは置いておくとして。今日はそのホワイトデーなわけです」
資源を溶かしきったので、吊り下げから両手足拘束にグレードダウンされているのだが、そもそも拘束が効いていないのだが、拘束する意味はあるのだろうか。
ともかく、拘束されていては何もできないという事だ。何気に昨日怒られたばかりなので、自重しようと思うくらいの心はある。
「ですが、もし出られたとして、いかがなさるおつもりで? 調理器具は無いと聞いておりますが……」
「ふっふっふ……甘く見てもらっちゃ困るよ。ちゃんとこの日の為に用意はしてあるわけです。特殊チョコを使って日持ちするようになっているチョコドーナツをね!!」
それを聞いたキアラは神妙な面持ちで、
「私の勘違いでなければ……それは一昨日食べられていたかと。マスターがこっそりと抜け出している間に見てきたのですが、マスターの荷物の中からチョコドーナツを持って行っていた方がいたかと」
「……そう言う事をするのはマシュだと思うんだけど、どうだろうか」
「えぇ、合っています」
「……い、いや、持って行く分には別に問題はないんだけどさ……何となく、お返しの日と言うのを忘れてないかなって。確かに即日返したには返したけど、それはそれ。これはこれだと思うわけです」
「えぇ、マスターにはマスターのこだわりがあるわけですね。分かりますとも。それで、マスターはどうなさるおつもりで?」
「そりゃ、これまた別枠で用意していたものがございますので。チョコクッキーなんですけども」
「なるほど。では、マスターのバッグはこちらに」
「うん。なんであるのかな?」
さも何でもないことの様に平然と用意されているバッグ。しかも、ピンポイントで隠していたクッキーが入っているバッグだ。
「もちろん、あらかじめ使うと思って持ってきていたからです。驚くほどの事でもないかと思いますが?」
「十分びっくりだよ。だって、行動がバレている様なもんじゃん。しかも荷物の中身まで……」
「別に、ばれても困る物は入っていないでしょう? あぁ、いえ、そうですね。あのアルバムを覗いて、でしょうか」
「……もしかしなくても、それは過去黒髭から貰って中身が気になるけど開けたら死ぬ。だけど捨てるのも忍びないからとりあえず持って帰ろうって思ったアレの事かな?」
「おそらくはそれかと」
ピンポイントで見られてはいけない人に見られてはいけないものを見られたようだ。
だが、なんだかんだ黙っていてくれそうなので、心配するまでも無いかもしれない。
「まぁいいや。適当に袋詰めして、メッセージカード入れて元の場所に戻しておけばマシュが気付くでしょう」
「では、私が元の場所に戻しておきますね」
「うん。よろしくね」
そう言って、オオガミは拘束を外して用意を始めるのだった。
最初の変態性は何処に行ったのかというくらいに常識人枠面しているキアラさん……何を企んでいるんだろう……