何もない平原だ……(ついに自由に暴れられますよ……)
「イベントキターー!!」
「屋外ですよ屋外!! 平原だからなおさら爽快です!!」
「これでいっぱい遊べるわ!!」
飛び出す三人。だが、即座に取り押さえられるオオガミ。
捕まったオオガミは首をかしげ、
「なんで捕まってるのかな?」
「むしろ、なんで脱走してるんですか」
「逃がすと思ったの?」
「……あぅ、アビーも説教してくるようになった……」
しくしくと泣きつつ、簀巻きにされていくオオガミ。
何故かアビゲイルが楽しそうにしているのは気のせいだろう。
「ふふふっ。マスターを捕まえるのも何度目かしら」
「そうですねぇ……五回は越えていると思いますよ?」
「じゃあ、後何回逃げ出すかしら。ちゃんとその度に捕まえるわね。マスター」
「あっはは……はぁ……なんと言うか、どこに逃げてもダメな感じなんだけど。確かその門は時空間越えてくるじゃん……」
「当然よ。私が逃がすわけないわ。だって、私のマスターですもの。どこへ逃げても、必ず捕まえてあげるわ」
「ひゃふぅ……これからの人生詰んだ気がするぅ……」
どこへ逃げてもアビゲイルは追ってくる予感がするオオガミ。
それを魅力と考えるか、闇と考えるかは別とするが。
「あはは……随分と余裕があるようだね。これも無数の特異点を潜り抜けてきた実績からかな?」
「大体いつもこんな感じだからなぁ……うん。でも、簀巻きにされるのは想定外だよねぇ」
「あぁ。僕も、まさかマスターが簀巻きにされていて、その上で余裕の表情というのも想定外だよ。中々精神が強いと見える」
珍しく褒められるオオガミ。しかし、それを見ていたマシュは、
「あまり褒めないでください。アーサーさん。先輩はそうやって甘やかすと、何処までも面倒なことをする天才ですから」
「何処までも面倒なとは何さ!! 出来る範囲で出来る事を楽しんでやってるだけだよ!?」
「それで色んな技術を手に入れてるから困ってるんです。礼装身代わりの術以外にももっと変なの持ってるじゃないですか!!」
「ほら、ネタはバリエーション豊富な方がいいから。色々出来るようにしておくと後々良いことがあるんだよ。きっと」
「最後、なんでちょっと自信無さそうなんだい?」
「そりゃ、その無駄技術のせいでこうなってるからかな?」
「あぁ……なるほど」
どうやらアーサーにも納得できるようだった。自分で言ったのにも関わらず、それで納得されると複雑な気持ちになるのだった。
「と、とりあえず、マシュ! 周回行くよ!!」
「了解です!! 報酬アップのために穀潰しを使い潰す勢いで!!」
変なところに気合いが入っているマシュに引きずられつつ、今回のイベントは始まるのだった。
もはやマスターへの扱いじゃない……しかし、全く抵抗しないとは、これ如何に。