さて。草原に出てから突如として失踪したキアラだが、その真相は単純明快。宇宙船を目指す外敵を一人で引き付けていたのだ。
それだけなら良い話なのだろうが、ところがどっこい。そこはキアラさん。いつも通り余計なことをしてくれる。
「ふふふ。私、マスターの為を思いまして、ワイバーンを持って参りました」
「拘束されてなくて、且つこっちを殺しに来てるのを持ってきたって言わない!!
大量のモンスター群。満面の笑みなので、わかってやっているところが更にたちが悪い。
「まぁまぁ。マスターなら何とか出来るのでしょう?」
「どこ情報ですかそれは!! マスターは普通弱いから!!」
「まぁ。サーヴァントの宝具を直撃して生きているようなマスターが普通だとは思えませんが……」
「どうしてそういうところはまともなのかなこの人!」
言っている間にも迫ってきているワイバーン。
ここまで全て紙一重でかわしているのは、過去にメイドオルタにやられたスパルタ修行のお陰だろうか。
あの時もワイバーンに襲われていたので、今とあまり変わらない状況と言えるだろう。ワイバーンに混ざって変態が約一名いるくらいの違いだ。誤差の範囲だろう。
「それにしても、よく避けますね……一度くらい噛みつかれると思ったのですが……」
「噛まれたら普通に痛いから嫌なんだけど!? なんでそういうことしてくるかな!?」
「いえ、どれくらい耐えるのだろう、と思いまして……」
「絶対良からぬ事考えてる……!! 絶対考えてる……!!」
完全にキアラを危険人物だと認識するオオガミ。ホワイトデーの時に積み上げていたキアラへの好感度は一瞬にして急降下したのだった。
再び心の壁が築かれたが、お構いなしのキアラ。
「さて、ではマスター。殲滅いたしますが、よろしいですか?」
「問題なし! というか、そもそもなんでこっちに連れてきたし!」
「ですからそれは――――」
「良いからワイバーンもろとも切り潰す」
一閃。ワイバーンを切り裂きながらキアラに迫るのは鈴鹿。
「あら、まぁ。また私を殺しに来たのですか?」
「何度でも殺してあげるし。つか、何マスターを殺そうとしてる」
「嫌ですね。ちゃんと助けるつもりでしたよ?」
「信用できないし。さっさとアンタごと始末するから」
「ふふふっ。怖いですねぇ」
そう言うと、二人はオオガミそっちのけで戦いだす。
残されたオオガミは、一度深呼吸をして、
「うん。逃げよう」
全力で逃げ出したのだった。
影ながら頑張っていた変態さんはやっぱり余計なことをしてくれました。ワイバーンの群れに襲われるとか、何話ぶりだろう……