「ふふふ……出たなドラゴン」
「あぁ、そういえば、竜の逆鱗が少ないんでした」
「ついでに槍の秘石も回収しないといけないわ。だって、術の秘石並みに無いわ」
無い無い尽くしだった素材が、一気に手に入るクエスト。シンクウカーンが手に入らないという問題はあるが、モニュメントが取れないだけなので、些細な問題だ。
シンクウカーンが一個につき10,000QPというのは、気にしないことにする。
「さて、鈴鹿はキアラを倒すのに大忙しだからアンリも巻き込ませておいて、こっちはこっちでアルトリウム回収するぞぅ!!」
「おー!」
「お、お~……!」
「マシュ副隊長! 声が小さい!」
「私が副隊長なんですか……?」
「それは予め言って……無いけど、アビーに任せられるわけないだろぅ!? 隊員を守るのは隊長の役目だしね!」
「マスターだと頼りないのだけど」
「グハッ!」
アビゲイルの何気無い言葉に精神をやられ、倒れ伏すオオガミ。
実際、オオガミよりもアビゲイルの方が強いのだから仕方無いことだろう。
「それに、隊長さんは全体の指揮を執らなくちゃいけないのだから、全体が見れる位置にいないとダメだと思うの」
「くぅっ……わりと正論だから何も言えない……!!」
「そうでしょう? じゃあ、マスターは私やマシュさんが怪我をしないように命令してちょうだいね。信じてるわ」
「むむむ……任せて!全力で頑張るとも!!」
「えぇ。お願いね!」
「……完全にアビーさんの手のひらの上では……?」
さりげなくオオガミの扱いがうまくなっているアビゲイル。
どこでそんな技を手にいれたのかは分からないが、どう見ても現状はアビゲイルの手のひらの上で踊っているような雰囲気。
マシュはその状況に一人気付いて嘆くが、オオガミは気付いていないようで、やる気に満ち溢れた表情をしていた。
マシュはそれがなんとなく気に入らなかったが、やる気のようなので、あまり深くは突っ込まないようにしようと思うのだった。
「さて、先輩。私が私が副隊長に勝手に任命されていることについては後でお話をするとして、とりあえず資源集めです。一切合財根こそぎ奪い取ってきてください!!」
「お、おぉ……なんかマシュが海賊っぽいことを……ドレイク船長のせい……? いや、まぁ良いか、もちろん答えはひとつ! 任せとけ!!」
ぐっ! と拳を握ると、オオガミはアビゲイルを連れて周回に向かうのだった。
一人さりげなく残されたマシュは、
「まぁ、私、非戦闘員ですし……置いていかれても……仕方無いですよね……」
と、置いていかれたことにショックを隠しきれないのだった。
シンクウカーンでQP集める予定が、気付いたら逆鱗と石に釣られていた……あれは悪魔の囁きだぜぃ……