「……なんか、不毛に思えてきたんだけど」
「あらあら。私は構いませんよ? マスターは高難易度に挑みに行ったみたいですから。それで、どうしますか?」
刀を納めつつ、鈴鹿はキアラの言葉を聞き、見回してみると、確かにいない。魔力もほとんど感じられなかった。
「へぇ……マスター行ったんだ。ってか、なんで知ってるし」
「それは……一応、あの方もマスターですから。位置くらいはなんとなく分かりますよ」
「ふぅん? まぁ分かるけどね」
分からなくはない。だが、それでも高難易度に挑んでいるまで分かるというのは、少し分からなかった。
だが、嘘を言う理由もないだろうから、嘘ではないと考える。
「さて……それで、どういたします? 様子を見に行くくらいなら出来ると思いますが」
「ん~……いや、いいっしょ。アビゲイルもマシュもいないから、一緒にいると思うし。むしろ、未だ狙われ続けるこの宇宙船を守るべきじゃん?」
「そうですか……では、私も行きましょうか」
平然とついてくるつもりのキアラに、目を点にする鈴鹿。
「えっ。いや、要らないし。来なくて良いし。つか、なんで来るんだし」
「私もまだ楽しみたいですから。よろしいでしょう?」
「……戦力が増える分には良いけど、邪魔はしないでよ?」
「あらあら。邪魔だなんて……私はそんなこといたしませんわ」
「どうだか。まぁとにかく、暴れてきますか!」
鈴鹿はそう言うと、迫ってきている敵を倒しに行くのだった。
* * *
「あ~……冷静に考えなくても、オレってば八つ当たりされてね?」
二人が去った後、ワイバーンと共に地面に転がされていたアンリが起き上がる。
さりげないオオガミの悪意によって戦闘中の二人のど真ん中に送り込まれたアンリは、案の定ワイバーンに紛れて潰されたのだった。
「つーか、容赦ねぇよなあの二人。途中から分かって叩いてたろ」
誰も聞いていないが、思わず呟かずにはいられないアンリ。
とりあえずワイバーンを邪魔にならないように端に寄せ、その上に座る。
「なんつうか、これだけ倒してまだ暴れる余裕があるとかやべぇわ。ちょっと一緒にいたくないわ。死んじゃうぜこれ」
ため息を吐きつつ、遠くを見るアンリ。ワイバーンのお陰でいつもより視点が高いので、遠くまで見える。
そこから鈴鹿とキアラの姿も見えるが、生き生きと暴れているのを見て、思わずパタリと横になる。
「はぁ……まぁ、しばらくは寝てられるだろ……」
アンリはそう言うと、そのまま目を閉じるのだった。
高難易度は、いつもと比べて異様に楽でした。感覚がおかしくなった感じがすごい……高難易度ってなんですっけ……