「つ、疲れたぁ……寝たい……」
「お疲れ様です、先輩。後は素材を集めて回るだけですね」
「圧倒的絶望感」
地面に横たわりつつ、オオガミはマシュの言葉に死んだ魚のような目をしながらそういう。
アルトリウム報酬は貰いきった。素材交換も終わった。後はひたすら、逆鱗と秘石を集めるために周回するだけだ。
だが、それはそれとして大変なものはある。
「ヒロインZ怖いわぁ……体力おかしいわぁ……」
「まぁ、かなりのタフネスでしたよね……」
「それでも全力を出したら一ターンでZを倒せるのね……」
「なぁ……オレがいる必要やっぱり無くね?」
確かに、HPを全て消し飛ばせるだけの攻撃力は得たが、問題はそれでも時間はかかると言うことだろう。
ついでにアンリの言葉は、当然スルー。連行確定である。
「さて……最高効率で戦った。次は最短で戦うのかぁ……」
「あの体力を一撃で消し飛ばせるとは思わないんですけど……」
「消し飛ばせなくても消し飛ばすしかないでしょ。倒さざるを得ない……石と逆鱗のための生け贄となれ、ヒロインZ……!!」
ヒロインZ絶対倒す。そういう意思を込めて小さく声を上げるオオガミ。
段々と気配が薄くなってきたアンリは、それに便乗して逃げようとしたが、即座にアビゲイルに捕獲された。
「最短っつっても、相手の体力考えろよ。100万越えだろ?」
「難しいねぇ……勝てそうにないなぁ……」
「頑張ってください先輩。わりと色々足りてないんですから」
「ですよねぇ……いやぁ……後輩ちゃんは殺意高いなぁ……」
「いや、先輩は死なないじゃないですか。その点に関しては超一級の信頼をしていますよ?」
「その信頼のされ方はどうなんだろ……」
絶対死なないと思われてるからこそ、さりげなく過労に追いやろうとしている後輩ちゃんに苦笑いを隠せなかった。
「さて……アンリよ。とりあえずお前は引きずり回しの刑だ。一緒に行こうや」
「おぅ。この最弱に道連れになれたぁ、流石だわ。マスターやるねぇ。どうしてやろうかこのやろう」
肩を掴まれているアンリは、掴んでいるオオガミを見ながら引きつった笑いを浮かべる。
「まぁ、アンリはもっと行ってきても良いわ。どんどん走ってね?」
「こいつ……自分は関係ねぇからって、調子に乗りやがって……」
「……なんか忘れてるみたいだけど、いずれはアビーもだよ?」
「私はいつでもウェルカムだもの。でも、今回はコストが足りないじゃない」
「まぁ、それを言われると耳が痛い話なのだけども。どのみち、今すぐにではないし」
「それは楽しみだわ」
本当に嫌味無く答えるアビゲイルに、オオガミとアンリは顔を見合わせて苦い顔をする。
「まぁ、うん。とりあえず行ってくるよ」
「あ~……なんだかんだ、逃げるのに一番良い言い訳はマスターの周回に付き合う事な気がしてきた」
二人はそう言うと、地獄の超時空級周回へと向かうのだった。
ようやく終わりましたよ……まぁ、終わらないんですけど。
アガサ・クリスティのドラマに見入って、書き負われなかった私……おそらく明日も……いや、明日は何とかしたいと思ってるんですけどね。