「アビーさんアビーさん。今日は何の日か知っていますかね?」
「え? えっと、マスターさんマスターさん。今日はエイプリルフールよ? それがどうかしましたか?」
「はい。ではアビーさん。ルールってご存知ですか?」
「ルール? エイプリルフールの?」
首をかしげながら聞くアビゲイル。
オオガミは頷きつつ、
「うむうむ。実はね? 嘘は正午までっていうのがあるんだよ」
「そ、そうなの!? 知らなかったわ……!」
「うん。まぁ、ローカルルールで、実はそこ以外はあんまり通用しないルールなんだけどね?」
「……マスターさん?」
「ちなみに、大国は大体一日中オッケーだったりする」
「なんでそんな豆知識を……いえ、きっと何処かで聞いたと思うのだけど、どうして突然言ってくるのかしら……?」
「うんうん。じゃあ、嘘か本当か微妙なラインの事を言った後に一つだけ。実は去年の四月からずっと異世界に見られていたりします」
「えっ?」
何を言っているのだろうか。と思うアビゲイル。
周囲を見渡しても何もないので、別に何かあるわけではなかった。
「別に、何もないのだけれど……」
「はてさて。今のは嘘か本当か。ちなみに、記録されていたりもするよ」
「記録……? いえ、そんなこと、なんでマスターが知っているのかしら」
「ん~……それはあれです。秘密ってやつだよ」
「ふぅん? まぁ良いわ。たぶん、私にはあまり害のない事だもの。でしょう? マスター」
「まぁ、確かに。あんまり害はないね」
「マスターが言うって事は、ある程度は安全だもの。信じているわ」
「う、うん……あれ……? なんとなく予定と違ってきているような……?」
何か企んでいたようだが、どうやら想像と違ってきたらしい。
うんうんと唸っているオオガミを見て、アビゲイルは微笑むと、
「じゃあマスター。巨大パンケーキ、楽しみにしてるわね!」
「えっ? 巨大パンケーキ? え、そんな約束……あれ!?」
颯爽と立ち去っていくアビゲイル。
残されたオオガミは、突然の事にしばし呆然とし、
「え、えぇ……巨大パンケーキ……約束した覚えないんだけど……仕方ない。何とかして作るか……」
「……先輩、あの、何を作るおつもりで……?」
オオガミが声に反応して振り向くと、物陰から現れるマシュ。
「あぁ、うん。巨大パンケーキを一つ、作ろうかと」
「巨大パンケーキですか? あの、先輩……もしかして、さっきアビーさんが言ってることを言っているのでしたら……その、あれはエイプリルフールのジョーク……嘘なんじゃないかと……」
「アビーがそんなこと言うわけないでしょっ! 全く……作るよ、マシュ!!」
「え、えぇぇぇ~!!?」
拒否する間もなく捕まるマシュ。そして、そのまま調理場へと連れていかれるのだった。
流石は人の話を聞かない系マスター。思い込みで走り出すことに関しては一流だった。
なお、実際は分かっていて悪のりしている模様。誰もこのマスターを止められないのだ……
あ、前回が365話。つまり一年ラスト投稿だったにも関わらず投稿することに頭一杯でスパッと忘れていたのが私です。二年目突入したぜ。わーい。