「することが無いぞ。エリザベート」
「そうね、私も無いわ。ネロ」
「……えっと、しりとりでもします?」
マスターの休憩中。暇な時間をどう持たせるかを考える二人に、パッションリップは苦笑しながら提案する。
「ダメだぞリップ。しりとりは辛すぎる。なんせ、言語圏が違うと通じないからな。既にやったことがあるからな。そうなることを知っておる」
「は、はぁ……多国籍しりとりは危険なんですね…」
「うむ。アレは地獄だったぞ……」
「英語なら可能性があるとか思わないことね。それは既に検証済みよ。そもそも英霊が生まれたほとんどは世界共通語なんて無い時代よ? 通じるわけ無いじゃない」
「そう言われれば確かにそうですね……そもそも、女神はひとつの言語圏で伝えられるのがほとんどですし……」
納得したパッションリップは、一人頷く。
そして、
「そこで余は考えた。言語違いでしりとりが出来ないなら、別に言葉を使わない遊びで良いだろう。と!」
「根本的に否定してますよ!?」
「盛大に道を踏み違えてるわね」
「えぇい何を言うか! 余が頑張って考えたのだから、聞いてくれてもよかろう!」
「はいはい。そんな意地にならないの。アンタが頑張ってるのなんて皆知ってるわよ。一部のボスだとアンタの独壇場だったんだから」
「むぅ……それでもエリザベートの方が前衛に出てるのが納得いかぬ…」
いつの間にか話が刷り変わっているのだが、誰も突っ込まない。
というより、ネロが一番考え込んでしまっている。
「私はただの支援よ……アンタと違って攻撃力がある訳じゃないわ。まぁ、全体宝具だからかもしれないけどね」
「ふむ……つまり、余が使われないのは単体宝具で且つ支援が薄いから……というわけか」
「そうなんじゃない?」
「ふむ、ふむ……うむ。余ではどうしようもないな!」
「ネロさん! 涙が隠せてないです!」
死んでる表情で声をあげるネロ。その目に溢れる涙は、その心を写し出していたのかもしれない。
「というか、遊びの話はどこにいったのよ」
「む。そう言えばそうだった。思わず余も忘れておったぞ」
「もうお話ししてるだけで良いじゃないですか…」
「そうはいかんぞ、リップよ。余は話しているだけでは退屈してしまうのだ」
「は、はぁ……私的にはそんな退屈してないように見えるんですけど……」
「ふっ。まだまだ甘いな。それではまだネロポイントはお預けだ」
「ネロポイント…?」
突然現れる新単語。
エリザベートとパッションリップは困惑する。
「なにその新システム。集めると何かあるの?」
「うむ。あるぞ? そやつに対する余の好感度が上がる」
「なんだ、要らないわ」
「なっ! ネロポイントを要らないと言うのか!?」
「いや、だってほら、アンタは一人だと死んじゃう系の皇帝でしょ? なら、ポイントが無くたって変わらないじゃない」
「エリザベートさんも人の事言えないような……」
「アタシは良いのよ。マスターに甘えるだけだからね」
「むっ! それは余の特権だぞ! エリザベートには許さぬ!」
「へぇ…? 良い度胸ね、ネロ……今度は歌で勝負をつけましょうよ。肉弾戦は流石に私が不利だから」
「良いぞ? 余の全力。見せてやるからな」
いつの間にか遊びの話はどこかに消え、残されたのは歌バトルを今まさに開催せんとする開催せんとする二人。
即座に身の危険を感じたパッションリップは、とりあえずマスターを守りに向かった。
その後、オオガミに正座をさせられ、叱られる二人の姿があったとかなんとか。
まぁ、たぶんしりとりをしても通じるとは思うんですけどね……こう、方言みたいなのは出るんじゃないかなぁっている想像からしりとりは却下されました。