「うん……もう、メタ空間でいいよね、マシュ」
「えぇ、そうですね。異聞帯も抜けましたし、もういいと思います。ただ、アナスタシアさんは抜きで」
「いや、うん。まぁ、熱が冷めるまでは触れない方向で行きたい」
冷静に、なぜ召喚できるのだろうかと思ってしまうオオガミ。
あんな倒れ方など、精神的に来るものがある。彼とセットにして置いておきたいほどには。
「はぁ……流石にね? あんなカップル見た後に平然と単身で出せるほど精神強くないよ。むしろセットでカルデアにいろよ。めっちゃ微笑ましく見ていたいわ」
「いや、それだと逃げられる可能性もあるんですが……」
「それはそれ。実際するのと、見ていたいのは別物だよ」
「まぁ、分からなくもないのですが……」
「ああいう甘いのは、見ていてほのぼのするしね。良いぞもっとやれ! の精神だ」
「そうですね。別室に隔離してみるのも面白いかもしれません。確か、一回だけあったじゃないですか。部屋に閉じ込められて、何かしないと出れない部屋が」
「あぁ、あれはねぇ……うん、まぁ、ありか」
「問題は、どこにそれを作るかって事だよ」
「むむむ……難しいですね……」
シャドウ・ボーダー内を大改装するわけにはいかないので、果たしてどうするかと考えるマシュとオオガミ。
「……というか、別にすぐにやる必要は無いよね」
「……冷静に考えると、そうですよね。やってる余裕がないですし」
「まぁ、カルデアに帰れたら、だよねぇ……」
「手伝ってくれそうな皆さんも召喚しないとですよねぇ……」
「……結局、誰も召喚できなかったし……」
「仕方ないです。電力が無いですし……」
「えぇ、えぇ。全く大変よね、マスターも」
「うんうん。アビーもそう思うでしょ?」
「……さりげなくアビーさんがいるんですよねぇ……」
何事も無かったかのように平然とオオガミの隣にいるアビゲイル。
マシュはそれを見て微妙な顔をするのだが、オオガミはまったく気にしていない。というより、いるのが普通とでも思っていないだろうか。
「あの、先輩? アビーさんがいる事に対してノーコメントなんです?」
「だってほら、アビーは渡って来れるし……」
「私に時間とかタイミングとか、問い詰めちゃだめよ。だって、私の移動に時間なんて関係ないもの」
「武蔵ちゃんの上位互換だよねぇ、どう考えても」
「そうなんですかね……? いえ、確かに何となくそんな感じもしますけど……」
ドヤ顔の二人を見て、本当にそうなんじゃないだろうかと考えてしまうマシュ。
ともかく、なぜかは置いておくとして、アビゲイルがいるという事は、一応歓迎すべきことだろう。
「まぁいいです。これで先輩と二人きりで、沈黙して凄い気まずい空間が生まれたりするのは防げそうですし」
「えぇ……こっちは別にそんな事思ってないんだけどなぁ……」
「静かなのは嫌よね。でも、二人だけだと会話のネタも尽きるもの。やっぱり私が来て正解ね!」
「それはそうなんですけど……むむむ……素直に納得できない私がいます……」
深く悩んでしまうマシュ。これは彼女の性というものだろう。仕方ないものだった。
そんなマシュを見て、二人は苦笑いするのだった。
なんだあのラブコメ!! アナスタシア出すつもりだったのに萎えたじゃないか!!(八つ当たり
いいぞもっとやれ!!(血涙