「うむむ……やっぱり狭い空間とは辛いものです」
「え。先輩、狭いところが大好きなんじゃ……」
「おっと? 後輩ちゃんがとんでもないことを言い出したぞぅ? いつ狭いところ大好きになったんだ俺?」
「だって、信長さんの工房って、意外と狭かったじゃないですか……そこに入り浸ってましたし……」
「あぁ、うん……ぐうの音も出ないわ……」
言い負けたオオガミ。確かにあの工房は製作物によってサイズが変わったりしていたが、基本的に狭いときが多かったので、確かに狭いところが好きなのかもしれないと思い直すのだった。
「うぅむ……それは置いておくとしても、やっぱり狭いよ。うん。人数的な意味で」
「そうですね……」
「あぁ? 霊体化すりゃ良いだけの話だろ?」
「アンリ。それだと一方的にしか見れないでしょ? つまり、部屋を広くしたい。または、広いところに行きたいってことよ」
「ふぅん? そういうもんか? オレにはよく分からねぇけど」
「そういうものよ」
「なんとなく、最近アビーさんがだんだん大人びてきているような……? 気のせいですかね?」
「気のせいだと思いたいなぁ……というか、もうブラックアビーとホワイトアビーの境目がどんどん無くなってきてる気がするなぁ……」
今更過ぎる気もしなくはないが、どんどんアビーは真っ黒の割合が多くなってきている。見た目的にも、中身的にも。
代わりにアンリのダメージが少なくなってきているので、悪いだけではないようだ。
「シャドウ・ボーダーの難点は、昔と違ってお菓子などをすぐに出せないところだね。あぁ、休憩室に行けば簡単に食べられるあの頃に戻りたい……」
「そうですね……願わくば、人理焼却に本気で頑張っていた先輩も帰ってきてほしいです……」
「おかしい……今も昔も全力だったはずなのに……後輩ちゃんに認知されてないよ……どうしよう……」
「普段の行いの結果としか言えないよなー」
「自業自得というものよね。マスター、昨日も同じことを言っていたわ」
「もはや口癖レベルじゃないか……!!」
どれだけ自分が周りを振り回していたかが分かるという不思議。問題があるとすれば、振り回されていた当人達。特に、某女神がこれを見ていないため、帰ってきたら同じ目に遭わされるだろうという想像がすぐに出来るところだろう。
「あぁ、皆が帰ってきてほしい気持ちがある一方、帰ってこないでほしいという気持ちも出てくる不思議……!! 願わくば、怒りゲージだけ無くなっていますように……!!」
「むしろ怒りだけ持って帰ってきても良いな」
「それ、ありですね」
「アンリとマシュさんが恐ろしい会話をしているわ……」
一人呻くオオガミ。それを見て惨劇が起こってほしいような会話をする二人。その状況に、アビゲイルはため息を吐くのだった。
うぅむ……再召喚の縛りを解くべきか……とは言っても、それをしたとして、エウリュアレが出るまで引かないといけない問題。むむむ……