「マシュ~、マシュ~? いる~?」
「はいはい。なんですか、先輩」
呼ばれるのは珍しいな。と思いつつ、オオガミの部屋に入るマシュ。
そして、目の前に飛び込んできた光景は――――
「――――なんというか、もう見慣れた光景ですよね」
「おぉっと。マシュが明後日の方向を向いてる。というより、見慣れた光景って何さ」
アビゲイルに膝枕をさせられ、背にはエウリュアレが寄り掛かっている状態。
カルデア時代ではあまり見られなかった光景だが、シャドウ・ボーダーでは、ここ最近よく見る光景なので、あまり気にしなくなってきていた。
「まあ良いです。それで、何の用ですか?」
「いやね? マシュだけを働かせっぱなしはダメだよなぁって思って、仕事を変わろうかと。それに、明日のイベントまで暇だからね。ちゃんと手伝おうかと」
「先輩……」
キリッとした顔で言うオオガミにマシュは目を見開き、そして、
「その、変なものでも食べました? それとも、おかしくなってしまったんでしょうか……とりあえず、ダ・ヴィンチちゃんのところで一回休んだ方がいいんじゃ……」
「えぇぇ……今の一瞬で自分の評価が一発で分かるけど、結果が一切嬉しくない……」
本気で心配するマシュに、肩を落として落ち込むオオガミ。
そのオオガミの後ろで、声を殺して笑っている女神がいるが、助け船を出してくれるとは微塵も思っていないので、スルーする。
「というか、もしかして手助けって要らなかったりする?」
「えっ……そう、ですね……そもそも、先輩が手伝ってどうにかなるような案件がないと言いますか、先輩のスキルが活躍出来る場所がないと言いますか……ともかく、今は大丈夫です」
「それ、暗に戦力外通告出されてる……?」
悪気が一切ないからこそ刺さる言葉。
わりと笑えない話なのだが、後ろの女神様はしっかり笑っている。というより、この場で笑っているのは彼女しかいなかったりする。
「あぁ、そうですね。一つだけ大きな仕事があります」
「な、なになに!? どんな仕事!?」
「それはですね」マシュは一拍置いて、「余計な騒ぎを起こさないことです」
目からハイライト消えるオオガミ。精神へのダメージは大きかった。
そして、笑いをこらえていたエウリュアレが寄り掛かっていたオオガミの背から逸れ、そのままベッドの上に倒れた。
「……エウリュアレ? 言いたいことがあるなら聞くよ?」
「い、いえ、別に、気にしなくていいわ。ふふっ。いえ、まぁ、そうね。バッサリ言われてショックを受けてる貴方を見ていて、面白くて。えぇ、もっとやってくれて構わないわ」
「うぐぐ……なんかいつもエウリュアレが一人勝ちしてる気がする……」
「……まぁ、先輩が落ち着いてくれたなら良かったです。とりあえず、今はやる事はありませんので、明日にそなえてゆっくりしていてください。先輩は特異点修復が仕事なんですから」
「むぅ……それを言われると反論のしようがないや。じゃあ、明日まで休憩しているね」
「えぇ、そうしてください」
そう言って、マシュはオオガミの部屋を出て行くのだった。
エウリュアレの子供っぽさが上がっているかもしれない……(今更
しかし、このオオガミ君の扱いよ……もう、この評価は変動しなさそうな予感……