「えぇ、嫌な予感はしてたわ。セイレムの西遊記の時に私が敵だったもの。戦うのは分かってたわ」
据わった目のエウリュアレ。淡々と言ってはいるが、その怒りは計り知れない。
「えぇ、戦うのは予想してたの。でもね? まさか全く同じ編成で行くとは思わないじゃない?」
「……いや、その……まさか相手も同じ編成だとは思わなかったんです……」
「言い訳はいらないわ。まずはその顔を叩かせなさい!!」
「いやぁ!! エウリュアレが珍しくマジギレしてるぅ!!」
敵が『メドゥーサ・エウリュアレ・ステンノ』の順番で出してきたのに対し、『エウリュアレ・ステンノ・メドゥーサ』で対抗したオオガミ。
クエスト名からなんとなく察していたような気がしなくもないが、どうせ一回くらい雑魚戦を挟んでからだろうと思っていたのが悪かった。
もちろん、負ける気は一切なく、全力で叩き潰したが。
それはそれとして、エウリュアレは弓を使ってオオガミの足元を狙い、転ばせようとしてくる。先ほどの顔を叩くというのは本気なのだろう。
「な、なんでこんなことになるのさ……!! 偶然の一致で殺されそうになってるとか、わりと笑えないと思う……!!」
「神の怒りなんてそんなものよ。だから、諦めて受けなさい!!」
「絶対に断る!!」
もはや見慣れている光景。毎度エウリュアレを怒らせている気がするが、反省しないのがオオガミだ。むしろ、怒られる度に行動パターンが増えていく分、鬱陶しいことこの上ない。
だが、それと共にエウリュアレの攻撃もバリエーションが増えていくので、どちらが先に策が尽きるかという戦いになってたりする。
ともかく、今日も元気に暴れるエウリュアレと逃げ回るオオガミ。まるで某ネコとネズミのようだが、当然ながら二人は気づいていない。
と、そんなときにふとオオガミは閃いた。
「そう! 桃!! 桃とか食べませんか女神様!!」
「桃……?」
「おうとも! 超レアアイテムですよ!! 美味しいはずだし!!」
「むむ……それは、ちょっと気になるわ……」
「でしょ? じゃあ、弓を下ろして――――」
「あげるわけないでしょう?」
「えぇ~……今までなら許してくれたのに……!!」
「私も変わったということよ。だから――――」
ついにエウリュアレの矢はオオガミのズボンと地面を縫い付け、
「これで許してあげるっ!」
全力で蹴り上げ、オオガミを倒すのだった。
「はぁ……全く。懲りない人ね。どうしてこう、変なことばっかりするのかしら」
やれやれ。と言いたげなエウリュアレ。正直どちらもあまり変わらないのだが、そこに気付くのなら、きっと争いはしないだろう。
その後、オオガミが起きるまでエウリュアレは桃を食べようと頑張るのだった。
完全に偶然の一致。イベントボーナスを持ってるキャラだけで突撃したらこんなことに……めっちゃ笑いました。