「ようやく見つけたわ!! マスターを返しなさい!!」
「何度も言うけど、貴女のじゃないから。返すつもりは全くないわ」
「人を物の様に扱うのはどうかと思うんだよ……」
虚空に現れた門から叫びつつ飛び出てくるアビゲイル。
エウリュアレはそれに平然と返す。しかも、オオガミの膝の上に乗っているので、説得力倍増だ。
「なんでマスターが膝の上にエウリュアレさんを乗せてるのかが気になるのだけど!」
「当然よ。だってほら、本人がそう望んでいるし」
「勝手に乗って来たんだけどなぁ……」
「マスター!! 本当に望んでいたの!?」
「だから、そんな事ないって――――」
「そんなっ!! マスターがそんなことを思ってただなんて……これもエウリュアレさんのせいね!!」
「あ、これダメだ。聞こえてない奴だ」
スルーされ、そのまま勝手に話が進んでいく。
特に、妙に楽しそうなエウリュアレがいるので、不安が更に煽られる。
「さて、じゃあ私が悪いと仮定して、一体どうするつもりなのかしら?」
「それはもちろん、物理的に退かして、再洗脳――――じゃなかった、元に戻すんだから!!」
「今完全に洗脳って言った! 俺、洗脳されてるの!?」
「ふふふ。それは良いわね。でも、それだと戦力が減るだけで意味がないと思うから、私と代わりたいなら私以上に敵を倒せばいいわ」
「その提案、乗ったわ! 何時から始めるの!?」
「え? もう始まっているのだけど」
「えぇ!? い、急がなくちゃ……!!」
瞬時に走っていくアビゲイル。
それを見ながら、エウリュアレは不敵に笑っていた。
オオガミはそれを見送りつつ、
「それで、どういう作戦で?」
「簡単よ。私が召喚されてからここまでの戦いで私が戦った数が私の討伐数。で、彼女が召喚されてからここまでの戦いが、彼女の討伐数よ」
「うわぁ……悪意しかないなぁ……」
「失礼ね。これでも善なのよ?」
「どう見ても悪だよねぇ……いや、どっちかっていうと、混沌の方が出てるのかな?」
「ん~……とりあえず、それ以上下手な事を言うと、殴るわよ?」
「止めてください死んでしまいます」
視線を逸らしながら、オオガミは言う。
実はさっきから右足の甲を踵で蹴っていたりするのだが、そこを指摘すると肘鉄が飛んでくるのは想像できることだった。
「まぁ、私たちも行きましょうか。もしうっかり彼女がやられても困るもの」
「そうだね。流石にアビゲイルがやられるのは困るし、マシュが半殺しにしてきそう」
「……マシュには、ちょっと勝てる気がしないわよね……」
エウリュアレはそう言って、遠い目をするのだった。
圧倒的悪……!!(善
何というか、最近書いていて、どこら辺が善なのか分からなくなってきました……(今更