浜辺にて。
襲いかかって来たデーモン達を薙ぎ払い、適当なところでシートを広げて海を眺めていた。
なお、珍しくオオガミの膝の上はアビゲイルが占拠していた。そして、いつもなら膝の上にいるはずのエウリュアレは、オオガミの右側に座っていた。
「あぁ、久しぶりに海に来たわね」
「ん~……そうだっけ? あぁ、いや、そうだね。意外と思ったより最近じゃないかも」
「あれ……私、行った記憶がないのだけれど……」
さざ波の音を聞きながら、最後に海辺に来たのは何時だったかと考える三人。この四ヶ月程の間に、はたして行っただろうか?
しかし、三人はあまり深く考える気はなく、わりと早めに考えるのをやめる。
「まぁ、海に来たのだし、何をするかを考えましょう。夏ではないから、本来来るべきではないのかもしれないけど」
「えぇ~……そういうこと言っちゃう? 分かるけども……そうだね。まずは食料の確保だよね。ドラゴンステーキだけだと飽きちゃうし」
「あ~……そうね。流石にもうドラゴンステーキは要らないわ。で、海に来たということは、魚ね?」
「そういうこと。ん~……でも、どうやって捕るかが悩ましいところだよねぇ……」
釣りをしようにも、釣糸も釣り針もない。銛を作ったところで捕れるとは思わない。ではどうするか。そう考えたときに出てくるのは、
「まぁ、罠かな?」
「……それこそ、出来るの?」
「最後に作ったのがかなり昔だからなぁ……やってみないとわかんないや」
「そう。必要なものとか、あるの?」
「ん~……丈夫な枝とか、かなぁ……後、ツタとかの、巻けそうな植物。頑丈で出来るだけ細いのでお願い」
「分かったわ」
エウリュアレはそう言うと、森の中へ入っていく。
すると、今まで静観していたアビゲイルが、
「ねぇ、私が直接取りに行くのは? 意外と出来ると思うのだけど」
「ん~……食料が無くて急いでるならそうするけど、まだいくらか食えるのはあるしねぇ……エウリュアレもああは言ってるけど、別に急かしてるわけでもないし、まだ急がなくても良いかなぁって。それに、捕ったとしても、食べなかったらすぐに腐っちゃうし」
「ふぅん? まぁ、要らないのなら良いのだけど。ところで、私に手伝えることって、まだあるかしら」
「エウリュアレに頼んだのと同じかな。罠は複数あっても困らないしね」
「分かったわ。行ってくるわね」
アビゲイルはそう言うと、オオガミを置いてエウリュアレと同じように森の中へと入っていくのだった。
それを見送ったオオガミは、
「……あれ、これって、かなり不味い状況なんじゃ……」
二人がいなくなったことにより、守ってくれる人が誰もいないという状況。そして、この浜辺はデーモンの住み処だ。つまり、これはいつデーモンと出くわしてもおかしくないということ。
なんとなく感じる嫌な予感に、オオガミは静かに、逃げる準備を始めるのだった。
完全に誰も考えていなかった盲点。とは言っても、逃げ切ること自体は問題なさそうなのが凄い……問題は合流できるかですね(キリッ