「マスター? 何か、私に言う事がないかしら」
「私もその言葉、聞きたいのだけど」
満面の笑みを浮かべるエウリュアレとアビゲイル。その二人が見ているのは、正座しているオオガミ。
進捗はと言うと、ちょうど先ほど金丹の交換がすべて終わり、残りは大蓮華のみという状況だ。
「あ~……その~……早く終わらせるとしましょう!!」
「マスター?」
「あら、逃げるつもり?」
凄みのある微笑み。さりげなくアビゲイルによって正座の状態でガッチリと固定されたため、逃げる方法が無い。
大体よくある事ではあったが、ここまで本気なのも珍しいな。と思うオオガミ。
「いやぁ、逃げるつもりはないんですけどね? その、ね? サボった分も含めて、急がなきゃかなぁって」
「そうね。それは確かにいい心がけだわ。で、今日は何をしていたの?」
「いや、何も……」
「えぇ、バッチリ遊んでたわ。金を全身に着けた羊みたいなドラゴンと戦ってたわ」
「あるぇ? バレてるぅ?」
「……なんというか、分かっててやってるんじゃないかしら、このマスター」
「なんとなく、私もそう思えてきたのだけど……」
周回をするとは何だったのか。なんだかんだ言ってほとんど終わってないのだが、残る時間はもう一日も無い。寝て起きたら半日も無いわけだ。
つまり、今日中に出来るだけ終わらせる必要があるわけだ。
「まぁいいわ。早めに終わらせないと、明日が本当に地獄になるもの」
「恒例の地獄周回かしら? 私はあまり味わったことないけれど」
「そうね……まぁ、そうならない方が楽でいいのだけれど。とにかく、残りは途方もないし、早く行かないとね」
「むぅ。まぁいいわ。さっさと終わらせに行きましょ? 次のイベントもありますし」
オオガミの拘束を解き、しかし今度は胴体を掴んで運ぶアビゲイル。
サボらない様に、という意味を込めているであろうそれは、オオガミとしてはマシュが見ていなくてよかったと、心の底から思うような状況だったりする。
「と、とりあえず、功徳の玉をメインで集めて行く必要があるわけだよ」
「まぁ、そうね。ただ、そこのボスはランサーだし、私じゃどうしようもないわ。任せたわよ」
「分かったわ。任せて、エウリュアレさん」
エウリュアレに言われ、心なしか嬉しそうなアビゲイル。それはエウリュアレに任されたからと言うよりも、オオガミを連れて歩けるというのが原因の様にも思えるが。
「さて、なんかもう捕まってる状態だけど、とりあえず行こうか」
「えぇ、ちゃんと頑張るわよっ!」
オオガミの言葉に、元気良く反応するアビゲイル。エウリュアレはアンリとランスロットと共に拠点を守ってくれているであろう。たぶん。
毎度恒例、終わらない事件。今回に限って言えば、もはや手遅れの予感。大丈夫なのかこれは……マム・タロトを狩ってる場合じゃないのでは……?(今更