「ハッ! 柏餅……!」
「それは明日よ今から準備しなさい」
「二日連続同じネタはどうかと思うの!」
オオガミの後頭部を叩きながら突っ込むアビゲイル。
昨日も同じような流れで大変なことになっていた彼女としては、本気で止めようとしていたりする。
「ぐふぅ……致命の一撃だよこれは……」
「普通に痛そうよね……まぁ、柏餅に関してはそもそも食材が集まりそうにないから別にいいのだけど」
「よ、よかったわ……また取って来いと言われたら困ったもの……どこを探せばいいのかしら」
「ちょっと別の世界まで?」
「そんな無茶苦茶を……いえ、エウリュアレさんなら言うと思ったわ。えぇ」
「流石に言わないわよ。だって、それをすると私が一人で戦う事になるじゃない」
「あぁ、そうよね。エウリュアレさんはそっちの方が嫌よね」
「それにほら、あの大きい球体とか、どう見ても性別無いから天敵ね。男性じゃないならお帰り頂くわ」
「逆に男性だったらよかったのかしら……?」
男性以外には妙に弱気なエウリュアレ。あくまでも戦闘面の話ではあるが、本気で苦手なのはわかっているのでアビゲイルは特には何も言わない。
「はぁ……まぁ、あの大聖杯とか言うのは面倒だもの。サーヴァント召喚とか、ふざけてるわよね」
「ここ、大聖杯の内部だったと思うのだけど。大聖杯内部で大聖杯……デタラメね……」
「自分の力を使って自分を顕現とか、不思議ね。弱体化は絶対すると思うけど、量産速度に関しては想定外よね」
大聖杯の数だけ生成されるサーヴァント。とは言うが、召喚されようが一撃で消し飛ばしてしまえば関係ない。ついでによく分からない理論で幻影召喚は出来るので問題無かったりする。
「うごご……バーサーカー相手なら無敵を誇るアビーちゃんがいるので問題ないけど……」
「……あと一時間追加で寝てなさい」
倒れているオオガミの頭を勢いよく踏んで気絶させるエウリュアレ。何か気に入らないことがあったのだろうが、正確な事はきっと本人以外には分からないのだろう。
とはいえ、セイバー相手にすら二分の一でしか活躍できないエウリュアレである。バーサーカー相手にも同様と言うのが悔やまれるが、それでもかなり戦える方だろう。
「ふ、ふふふ。どう考えても私に対して悪意があるわよね? えぇ、えぇ。でも、今はもうセイバーもバーサーカーもいないから私もアビーも役に立たないわね。って事で、全面で壁になりなさいマスター」
「気絶させておいて壁にする……まさにエウリュアレさん……!!」
残酷すぎる宣言。明らかに楽しそうなので少し怖くなるアビゲイル。
不気味に微笑むエウリュアレはそのまま大聖杯に向かっていく。置いていかれると一人で心細いので、アビゲイルもついて行くのだった。
柏餅……流石に、手に……はい……らない気がするんですよねぇ……
これは今年のイベント食材不足の危機……