「さて…どう攻めれば良いものか…」
真剣な表情でそんなことを呟くオオガミ。その視線の先にいるのは、我がカルデアの番犬こと、新宿のアヴェンジャー――――わんこである。
もう真名が分かっているにもかかわらず、無意識にわんこと言ってしまう。
狼だろ。とか言われてもお構い無しである。
もちろん、一人で来たら殺される可能性もあるので、巌窟王も一緒である。
「マスター。まだ折れないか…?」
「当然。このくらいの傷で折れるなら、あの監獄塔で死んでる。違う?」
「フッ…そうだな。お前はあの監獄塔を生き延びた…ならば、この程度で折れるなど、あるわけがない」
オオガミが言うように、二人は傷だらけである。
その傷はわんこをもふろうと突撃したときに付いた傷で、もちろんもふる事は出来ずに、軽く吹き飛ばされた。
巌窟王は、どちらかというと、マスターを助けるときにやられた程度なので、あってないようなものだ。
「しかし…どうやって次は攻めようか…」
「……いや、言いにくいことだが…マスター。新宿で戦ったときには、エウリュアレとマシュに助けて貰っていただろう? 同じようにしたらすぐにでも出来るのではないか?」
「………エウリュアレ呼んでくれば、1ターン分だけもふれる…?」
電撃が走ったように硬直するオオガミ。
巌窟王も、何とも言えない気まずい気まずい雰囲気に目を逸らす。
「……よし。巌窟王。出直そう。今度はエウリュアレを連れてこよう」
「ちょっと待て。まさか、まだ俺を参加させるのか?」
「そりゃ、逃げるとき巌窟王がいてくれるなら心強いし。それとも、何か予定があった?」
「いや、まだ時間はあるが…」
「なら出来るだけ手伝ってくれるとありがたいな。無理だったらいいけど」
「……クハハッ! 分かったぞマスター。お前の願いは叶えよう…待て。しかして希望せよ。とな!」
二人は不敵に笑い、その場を立ち去るのだった。
* * *
「で、結局あの犬を触りたいためだけに私のところに来たの?」
「そういうこと!」
エウリュアレの部屋でオオガミはそう言った。
「ふぅん? 嫌よ」
「そんな…!」
エウリュアレは楽しそうに笑い、オオガミは悲しみの表情を浮かべる。
「当たり前じゃない。私は戦いは苦手なの。それに、貴方の為に動くなんて、なんか嫌だわ」
「むぅ…まぁ、無理言ってやってもらうようなことでもないしね。仕方ない。諦めよう」
「あら。諦めが早いのね。まぁ、私は構わないけど」
「うん。まぁ、巌窟王にも予定はあるしね。別に、今日じゃなくても良いよ」
彼はそう言って、部屋を出る。
すると、部屋の外で壁に寄りかかって待機していた巌窟王がこちらを向く。
「良いのか?」
「良いよ。というか、もふもふさせてもらいたいときにしかほとんど会わないってのが問題だったわけだよ」
「ふむ。ということは、周回しにいくのか?」
「そういうこと。というか、それが正攻法だからね。なんでそれを思い付かなかったのか…」
「まぁ、確かにそうだ。では、俺も付き合うとしよう。行くときは声を掛けるといい」
「うん。ありがとう。巌窟王」
「ふん。気にするな」
二人はそう言って行ってしまうのだった。
「……本当に行ったわね…全く。根性なしね。メドゥーサの所にでも行きましょうか」
本当にあっさりと帰っていったオオガミに拍子抜けしながらも、すぐに切り替えて遊びにいくエウリュアレだった。
家の新宿わんこは絆レベル0という、全く育ててない状況。もちろんサーヴァントレベルも1のままです。
そりゃもふもふ出来ませんって。
真名…明かしていいものなんでしょうか…