「ふ、ふふふ、ふふふふはははは!! ただいまマシューーー!!!」
「うわぁぁぁ!!」
跳びかかってきたオオガミを反射的に盾で殴り飛ばすマシュ。
狭い車内をそこら中にぶつかりながら転がっていくオオガミ。
「ハァ……ハァ……! 一体どうしたっていうんですか。思わず全力で殴っちゃったじゃないですか……」
「うん……全力で殴り飛ばすマシュは、なんというか、流石と言うしかないです……」
「目覚めたばっかりの相手に盾で殴りかかるとか、容赦ないわね……」
「流石マシュさん。危険人物第一位ね」
「……もしかして、カルデアとは危険なのだろうか……」
「いえ、カルデアが危険と言うより先輩が危険――――あの、どちら様ですか?」
聞きなれない声に反応して、声の主を確認するマシュ。
「あぁ、すまない。挨拶が遅れた。ジークだ、よろしく頼む」
「ジークさんですね。あはは。お見苦しい所をお見せしちゃいました。今片付けますね」
「片付けると言って、マスターを引きずっていくとは、流石マシュね。完全に邪魔者扱い……」
「昏睡から目覚めてすぐにマシュさんに跳びかかるのも問題だと思うの。マスターもマスターね」
「……やはり、危険なのではなかろうか……?」
「わりと日常よ。慣れた方が良いわ」
「そうか。では、頑張ってみる」
生真面目なのか、真面目なのか。とはいえ、慣れる慣れないは頑張ってどうにかなるようなものでもないと思うので、エウリュアレは黙っておく。
アビゲイルは楽しそうに笑っているので、きっと何かやるつもりなのだろうと予想するエウリュアレは、最終的にオオガミに投げればいいかと思い、見なかったことにした。
「というか、今更だけど、悲鳴が『うわぁ!』ってどうなのよ。普通『キャァ!』とかじゃないの? 僕の可愛い後輩は『うわぁ!』派なの?」
「……貴方、面倒な性格しているわね」
「咄嗟の叫びをコントロール出来るものなのだろうか……」
「そこじゃないです。どうしてその悲鳴を求めてるかが問題なんです。先輩。とりあえずシャドウ・ボーダーの外にぶら下げる感じでいいですかね?」
「あっ。マシュの殺意が本気を物語る。これは死んだな」
「マスターは加減を知らないからこういうことになるのよ。縄は用意できてるわ!」
「一体今の一瞬でどこから持ってきたんだ!?」
瞬時に取り出された縄を見て困惑するジーク。
取り出された縄と殺意高めのマシュが合わさることによって死告天使が舞い降りそうなオオガミ。
エウリュアレはその状況を見て、
「じゃあ、マスターを縛り上げましょうか」
面白そうな方へ手を貸すのだった。
極地用礼装なら生き残れますよね、たぶん!
そしてあんまりジーク君が話に入れなかった……いえ、未だに登場してないアナスタシアよりはマシかもしれないけど……