「京の都って言っても、内陸側だから魚とかはほとんどないよね」
「穀物がメインよね。野菜とかもあるけれど」
「お米はあってもパンはないのね。パンケーキも無いのかしら」
「時代的に無いね」
「残念。まぁ、お団子があるし、そこまでの不満はないのだけど」
スキップしながら歩くアビゲイル。きんつばも買っていたりするが、今の彼女は団子だけで満足しているようだ。
「そういえば、金色の城、解体すればまだ買えるんじゃないかしら」
「あぁ……昔も同じような会話をした思い出……」
「……砕けば良いのかしら」
真顔のアビゲイル。とは言っても、金をどこで売れば良いのか。
そこまでは考えていないので、アビゲイルは仕方なく断念する。
「むぐぅ……私の和菓子制覇計画がぁ……」
「京都だけじゃ制覇出来ないって。汎人類史を取り戻したら日本に行こうか」
「……給料って、どうしたんだったかしら?」
「……ダ・ヴィンチちゃんに後で請求しよう」
言われて、マンション暮らしの時に使った後どこに置いていたか忘れている。
実はマシュが持っていたりするのだが、オオガミが知るよしもない。
「追い討ちをかけるみたいで悪いのだけど、クリプターとの戦いって、給料が出ないんじゃなかったかしら」
「なん……だと……? じゃあ、ダ・ヴィンチちゃんのへそくりを奪うしか……?」
「マスター……悪い人ね?」
「まぁ、平和のための犠牲ってことで」
「そうよね。私のおやつの犠牲になりなさい」
「私のおやつ代にもなるわ」
何故か得意気な二人。
今頃ダ・ヴィンチちゃんはシャドウ・ボーダーで悪寒を感じているだろう。
「さて。今日は攻城戦です。どうやって攻める?」
「上空から強襲!」
「アビゲイルで殲滅」
「アビーはともかく、エウリュアレのその他人任せなスタイル、嫌いじゃないよ」
「悪意があるわよね、それ」
笑顔を浮かべつつ、しかし全く笑ってない目。
そんな笑顔に、オオガミは引きつった笑顔を浮かべるしか出来ない。
アビゲイルはそれを見て少し楽しそうにしているのが、オオガミの顔の引きつりを悪化させる。
「ま、まぁ、アビーによる奇襲ってことだね……うん。奇襲は正義ってことだ」
「えぇ。善的にはオッケーよ」
「悪的にもオッケーだわ」
「善も悪も信用ならない……実質どっちも悪じゃ……」
事実、二人とも混沌なので、オオガミの見解はあながち間違ってはいない。
ともあれ、方針は決まったも同然。なので、おやつをカルデアに送って、金策をしに向かうのだった。
総額を考えるより、実際に貨幣にしてみればいいよね!(錯乱