「金銀小判がざっくざく~♪」
「そっして~ぜっんぶ~おっかしっにな~る~♪」
「で、全部食べて振り出しに戻ったと。そういうことで良いのね?」
「エウリュアレ……声のトーンがガチ過ぎるって……」
歌ってたアビゲイルと茶々は、エウリュアレの声に反応して瞬時に正座する。
なお、オオガミはエウリュアレをなだめようとしているが、おそらくそのうち一緒に叱られる。
「二人とも、忘れちゃいけないんだけど、シャドウ・ボーダーは食糧難だから、食材を確保しないと帰ったら何もないんだからね?」
「「……!?」」
「すっかり忘れてたみたいね。じゃあ、何をしなくちゃいけないか分かるでしょ?」
「私のご飯!」
「茶々のお菓子!」
「そのための資金集め。ほら、早くしないと特異点が無くなるわよ」
「「行ってきます!」」
飛び出し、走っていく二人。
エウリュアレはそれを見て面白そうに微笑み、オオガミはエウリュアレが狙っていることを予想していた。
そして、二人の姿が小さくなって、声が届かなくなった辺りでエウリュアレは振り返り、オオガミを見ると、
「扱いやすくて助かるわ。じゃあ、マスター。行きましょうか」
「うぇ? ど、どこに?」
腕を絡められ、引っ張られるオオガミ。
本来なら嬉しいと思うところなのだろうが、いつもと全く違うため、警戒しかしていない。更に言えば、エウリュアレが満面の笑みなのも不安に拍車をかけている。
「別に、決めてないわ。目についたものを食べようと思って。食べ歩きってところね」
「うぅむ、二人に言ってたのが方便だったってことだ。流石エウリュアレ。年長者は伊達じゃないってことだね」
「別に、そういうことじゃないのだけど。ただ単にあの二人を追い払いたかっただけだし。食べ物に反応してくれて助かったわ」
「ふぅん? で、何で追い払う必要があったの?」
「だってほら、二人がいると食い扶持が減るでしょ。それはなんか嫌じゃない」
「あぁ、なるほど……てっきり食べ歩きをしたいけど、二人の前でやるのはなんか恥ずかしいって奴だと思ってた」
「むぅ……もっと拡大解釈して、私がマスターと一緒に行きたかったからっていうのだったら思いっきり笑ったのに。どうしてそう面白くない答えなのかしら」
「それは、ほら。エウリュアレはそういうことは思わないって思ってるし」
「…………」
次の瞬間、オオガミの脛は蹴り飛ばされ、短く悲鳴を上げる。
「っつぅ~……何するんだよぅ……」
「別に、マスターが私の事を分かってくれていて良かったと思って。さぁ、行きましょ」
何故かさっきより少し機嫌が悪そうなエウリュアレに連れられ、二人は町中を散策するのだった。
うぅむ、なんとなく阻止したくなってしまう甘い空間。そのうち書いても良い……ですかね……?