理不尽な怒りだぁ……(だとしても許さない)
「あぁ、ここが一番涼しい……」
「その頭、吹き飛ばすわよ?」
「私、どっちを倒せば良いのかしら……」
「茶々、修羅場展開は見ないことにしてるから。だってほら、巻き込まれたら痛いし」
オオガミの発言と同時に殺伐とする空気。
理由も分かりやすいもので、オオガミがわざわざアナスタシアの近くまで移動したのが原因だった。
夏の足音は、何故か何処にいようと影響を及ぼしてくるので、常に冷気を出し続けているアナスタシアの元へと行ってしまうのも仕方の無いことだった。
だが、周囲がそれを容認するかは別問題だった。
「うぅむ、明らかに殺意全開なんだけど、なんで殺されそうになってるか。ここが分からない……」
「知らなくても良いわ。でもとりあえず射っておくわね」
「えっ、ちょっ、ひどっ!」
放たれた矢を紙一重でかわすオオガミ。
同時に、わりと本気の舌打ちがエウリュアレから聞こえる。
「うん、なんというか、今のは本気で殺しに来てるなって思った。ヘルプミー茶々!」
「止めてマスター! わりと本気で! 流れ矢で死にたくない!」
「思いっきり見捨てられた!?」
アナスタシアでもアビゲイルでもなく、真っ先に助けを求めた相手は茶々。
あくまでも撃退できそうな人物に向かっていっただけなのだが、その選択は一瞬で敵を増やす。
「とりあえず、後何本か射っておきましょうか」
「触手で足止めしても良いと思うのだけど」
「氷漬けでも良いと思うわ」
「待って待って待って。まだアビーが敵に回るのは分かる。なんでアナスタシアもそっち側なのかな!?」
「だって、マスターは一番近くにいた私に頼らず、茶々さんの方へ行ったんだもの。私、凄く傷ついたわ。えぇ、とっても」
「うぅむ、どうやら勝手に地雷を踏んで、敵を三倍に増やした上に味方ゼロと……つまり諦めろと!」
ドヤ顔で言い切るオオガミ。
そして、三人は真顔で同時に攻撃を始める。
「うん。懐かしいけど、一発でも当たったら即死なんだよねコレッ!」
ノッブの三千世界を思い出す程の攻撃だが、その全てが自分に向かってきていると考えると、恐ろしすぎた。
なので、回避をしたり無敵を張ったりして逃走するのだった。
「くぅ……いつも通り全く当たらないのだけど」
「とても不思議なのだけど、なんで門の出現位置がバレてるのかしら……未来視持ちじゃなかったはずなのだけど……」
「予測回避があるもの。絶対に避けられない攻撃以外は対応するわよ」
「私の時は、回避一回だった気がするのだけど、気のせいかしら……?」
「それも不思議だけど……エウリュアレさんもアナスタシアさんも、このまま行くとオートマタとも戦うことになると思うのだけど」
「「問題ないわ」」
「凄いやる気を感じるのだけど……でも、私も同じなのよね」
そう言って、途中で出てくるオートマタ達を破壊しつつ、三人はオオガミを追いかけるのだった。
ちょっと殺伐感を入れようとすると一瞬にして追いかけられるオオガミ君。彼は呪われてるのかもしれない……(遠い目