本日もオオガミの部屋は騒がしい。
だが、周囲はわりと平和だった。
なにかと言って、あの周辺は危険なことがよく起こる。宝具が飛んでたり、異次元の門が開かれてたり、オオガミが転がってきたりする。
なので、オオガミの部屋の近くを通るのは、大体の人が嫌がっていたりする。
「まぁ、彼らの意見も分からなくはない。僕自身、今すっごい不安だからね」
「流石に突然攻撃が飛んできたりはしないだろう。マスターも、彼女たちも、自重はするだろう」
「それで自重してくれるのなら、エルキドゥさん達は苦労してませんって」
ついに復活したマシュと共に、ジークとアヴィケブロンは廊下を歩く。
オオガミがあまり活動していないので、三人も暇だった。
「しかし、意外とやることがないときは本当に無いんだね。驚いたよ」
「あぁ。これで貴方も研究に没頭できるのでは?」
「それなんだが、ここは工房が作れないから無理なんだ。拠点を手にいれるまでの辛抱だな」
「ゴーレムが量産されてるだけで、かなり助かるんですけどね。まぁ、来週までは休めるんじゃないかと思います」
「一週間か……ふむ。じゃあ、他にもゴーレムの素材になりそうなものを見に行ってみるかな」
「俺も一緒に行こう。素材の置き場も再確認しておきたいからな」
「召喚されてそのままこっちの仕事を手伝っていただいてありがとうございます。先輩には後でしっかりお話ししておきますね」
「俺はあまり気にしていないが……そうだな。ほどほどに頼む」
「僕としては、工房さえくれれば文句はないけどね。じゃあ行ってくるよ」
そう言って二人は別れ、マシュはオオガミの部屋へと向かう。
直後、部屋から転がり出てくるオオガミ。
「ストップ! そろそろこのやり取りは飽きられてきてると思うから!」
「大丈夫です。私が相手ですから」
「相手の問題じゃないと思うの!」
鎌を構え、どう調理しようかと言いたげな目。
命乞いをするオオガミも、いつもより本気な気がする。
だが、本当に恐ろしいのは、それを冷静に分析しているマシュ自身だろう。
「先輩……今日は何をしたんですか?」
「ま、マシュ!? いや、別に特に変なことはしてないよ!? そもそも、なんでこんな目に遭ってるかあんま分かんないし!」
「アナさん?」
「確かに深い理由はありませんが、強いて言うならば、サーヴァントの人数が多いのと、石の貯蔵がほとんど無くなっているので、それに対する追及です。マシュさんもその情報は欲しいでしょうし」
「なるほど……分かりました。存分にやっちゃってください」
「思いっきり見捨てられた!? やるじゃねぇのこの後輩……!!」
「では、捕縛させてもらいます!」
「ぎゃああぁぁ!!」
マシュの決定と共に動き出す二人。
アナの攻撃を紙一重でかわし、オオガミは逃げ出すのだった。
また追われてるよこのマスター(呆れ