「さて、逃げ切ったところで再開だ」
「なんで逃げ切れるのかしら……私、手伝ってないのだけど……」
「茶々がいないでしょ? つまりそう言う事よ」
「オーダーチェンジ……?」
実際には、茶々はたまたま部屋を出て行ったのと同時に帰って来ただけで、普通にガンドで拘束した後に全力で逃げ出しただけである。
そして、それを証明するように、普通に戻ってくる。何処かから手に入れたのだろうクッキーの箱を持って。
「ふぅ……しかし、なんか妙に強い幻獣さんだよなぁ……攻撃力がちょっと強い感じ」
「茶々一撃で死ぬんだけどぉ……なんでマスター、弓で狩れるんだし……」
「一撃離脱大剣で殴ろうぜ茶々……」
「ぐぅ……心眼掘りが終わらないのが悪い……!」
「俺は心眼以外に超心も無いから、護石とマム胴でカバーしてるんだよね……」
「見てて思うのは、私にはちょっとついていけそうにないってことかしら」
「私はランスを極めてみるわね! カウンターとかカッコいいわ!」
「……なんでランスなのかしら」
「攻撃を防ぎきって、一方的に蹂躙する的な?」
「モンスターという名のバーサーカーを制すってことかしら……?」
「強引解釈ってことだねっ! でも、茶々は許容するのです」
そう言いつつも、視線も手も止めない茶々。隣でオオガミも手伝っているが、白い幻獣さんはびくともしない。
なお、アビゲイルは、今のところティラノ擬きと戦闘中だった。
「硬いなぁ……しかも、雷纏われると顔面以外当たらないしなぁ……」
「でも、的確に当ててるのよね……実はアーチャー?」
「現実は甘くないのです。的確に当たるかどうか以前に、弓も銃も持ったことも無いって」
「要練習ね。あぁ、でも、肝心の銃弾がないんだったわね。残念。戦うマスターも見てみたかったのだけど」
「マスターが戦うときって、相当ピンチな時だと思うの。まぁ、訓練はするけどさ……」
どうやらかなり削っていたのか、びくともしないように思えた幻獣さんは足を引きずりながら最上層へと逃げていく。
「攻撃から逃げるのは、普段から訓練してるよね。茶々は見逃さないのです。だって、本気で命懸けてるもん。背後からの攻撃がめっちゃ殺しに来てたし」
「なんでか分からないけど、いつも一緒にいる人に限って、殺しに来てる気がする。なんでだろ……」
「それはマスターがげんい……ぎゃああぁぁ!! また雷で一撃なんだけどぉ!!」
「なんか確信に迫るような事を言いかけていたような……? 茶々、もう一回言って――――あ、倒しちゃった」
「マスタアァァァァァァァァァァァ!!!」
茶々が倒れてすぐに倒れる幻獣さん。
悲鳴を上げる茶々は、移動用の特殊装備で風に乗り、最上層まで飛ぶ。
なんとか剥ぎ取りも終わり、ホッとしたところで改めてオオガミに殴りかかる茶々。
「茶々が止め刺したかったんだけど!」
「そう言われてもね!? 流石にさっくり終わると思わないじゃん! しかも、茶々が倒れた瞬間に!」
「すまん……ただ、一つだけ言うのだとすれば、このクエストは報酬が本体なんだよね……幻獣チケット集めだし」
「それはそれ、コレはコレだよ、マスター! 幻獣チケットはめっちゃ欲しいけどね! とりあえず後6周!」
荒ぶる茶々。オオガミ的には拒否する必要がないので、そのまま続行するのだった。
「で、アビーは終わりそう?」
「調子に乗って二回やられちゃったのだけど……エウリュアレさん、見ててくれると助かるのだけど」
「あまり役に立たないアドバイスは任せて。マスターからのお墨付きよ」
「威張れることじゃないと思うの……」
そんな事を言いながら、エウリュアレはアビゲイルのプレイを見守るのだった。
歴戦王に弓で挑むと勝てるんですけど、太刀で瞬殺されたんですよね……近接で挑むなってことなのかと思って、とりあえず後五回倒してから考えることにした私です。