「う~ん……どうするかなぁ……」
「本当にね。なんで屋根の上に登ったのよ」
「いやぁ、登りたかったとしか言いようがないね」
唐突に探偵事務所の屋根に登ったオオガミ。
なんとなく後ろをついていったエウリュアレも、同じように屋根の上でぼーっとしていた。
「でもまぁ、やっぱ景色は良いよね」
「まぁね。でも、アビーに高いところに行かせてもらうのもありかもね」
「それはそれでありだと思うけど、こっちはこっちで、自力で来た感があるからそれ込みでいい感じもあるわけだよ」
「ふぅん……? まぁ、わからなくもないけど、よく登ったわよね……」
「それを言ったら、なんでエウリュアレがついてきたのかが気になるんだけど……?」
どこからか手に入れてきた鉤縄で登ってきたオオガミもオオガミだが、特に何の意味もなくオオガミを追って一階から跳躍して屋根の上まで来たエウリュアレに、思わずオオガミが吹き出したのは仕方のないことだろう。
「私はほら、やることないんだもの。皆エミヤの所に行ってるんだもの」
「あ~……まぁ、エミヤはご飯係として優秀だからね……お菓子とか、作ってくれるしね」
「私も腕は認めるんだけど、なんで皆あんなに集まるのかしら」
「ん~……まぁ、一回行ってみたら?」
「むぅ……なんか、凄い負けた感じがするんだけど……」
「なるほど……うん。じゃあ、一緒に一回行ってみようか」
「えぇ~……私、別に興味ないのだけど……」
「まぁ、調理してるのを見てるのも楽しいと思うんだけど」
「別に、マスターだけでいいんだけど」
「……それを言われると、何も言えなくなるんだけど……?」
いつも通りの声と表情で、エウリュアレが言った言葉に対し、オオガミは何とも言えない表情になる。
しかし、途中で自分が何を言ったのか気付いたのか、エウリュアレはひっそりと距離をとる。
「いえ、その、別に他意がある訳じゃないわ。単純にお菓子はマスターが作ってくれるのがあるから良いかなって思ってね?」
「あ、あぁ、うん。いや、流石にエミヤに勝てる気はしないんだけど、まぁ、エウリュアレが認めてくれてるなら良いかな……?」
「あぁ……変なこと言っちゃったわ。これで変なこと言われても嫌なのだけど……聞いてる人はいないわよね?」
「まぁ、見た感じいないかな。もしかしたらいるかもしれないけど」
「もしいたら、マスターを消し去って無かったことにするわ」
「あぁ、こっちに被害が来るのね……」
エウリュアレの覚悟を決めたような言葉。
オオガミはそう言って、遠い目をするのだった。
ネタ切れすると甘いのを書きたくなる不思議。
本当にエウリュアレメインヒロイン説……