「リップ! お膝の上に乗せて!」
「えぇ!? わ、私の膝の上ですか……?」
廊下で唐突にナーサリーにそう言われ、困惑するパッションリップ。
「うん! なんか、そこに座ってみたいの!」
「う~ん……そんなに座り心地良くないですよ?」
「良いの! 私が座りたいの!」
「えぇ……うぅ、分かりました。でも、特別ですよ?」
「分かったわ!」
そう言うと、ナーサリーはパッションリップの手をよじ登っていき、パッションリップの膝の上に自力で乗る。
「わわっ。案外前が見難いんですけど……」
「わぁ! いつもより高いわ!」
「あ、あの……動きにくいんですけど……」
「むにむに……ふかふか……座り心地も最高だわ!」
「わひゃぁ! 変な所触らないでくださいぃ!」
悲鳴を上げるパッションリップと、その反応が面白いのか、追撃していくナーサリー。
すると、ちょうど通りかかったオオガミがそれを見て、
「こら、ナーサリー。リップに迷惑かけちゃダメでしょ。そういうのは廊下の真ん中じゃなくて、部屋の中でしなさい」
「はーい。ごめんなさい。次は気を付けるわ」
「あ、あの、マスターさん? それ、止める気は無いんですよね……?」
「えっ? いやいや、そんなこと無いよ? 廊下でやる事は阻止したから。部屋の中ならオッケーだから」
「それ、やっぱり止める気ないですよね?」
パッションリップの上に乗っていたナーサリーを回収したオオガミが、ナーサリーを抱えながらパッションリップに答えるが、明らかにパッションリップへの攻撃を止めさせるつもりが無いのが分かる。
「私、こういうの担当なんですか?」
「仕方ないよ。ナーサリーに目をつけられちゃった時点でどうしようもないんだよ」
「ちょっとマスター! 私はそんなに誰振り構わずこんなことをしたりはしないわ! ただ、リップが座ってるアレが羨ましかったの!」
「これ……私の手なんですけど……」
「そうだよ。それに、そういう乗り物が欲しいなら、用意して上げるから言いなさい。メディアとノッブが何とかしてくれるはずだから」
「そうなの!? 私、ちょっと行ってくるわ!!」
そう言うと、オオガミの腕の中から抜け出し、メディアとノッブがいるであろう休憩室に走っていくのだった。
「わぁ……すごい元気ですねぇ……」
「いつもあんな感じというか、子供の無限パワーというか……って、子供って言ったら俺も人のこと言えないか。というか、大丈夫? 何かされてない?」
「あ、大丈夫です。特にされたことは無いので。びっくりしただけです」
「そう? それならいいんだけど」
「ありがとうございます。ただ、問題があるとすれば、何をしたかったのか忘れたってくらいですね」
「大問題だと思うんだけど。とりあえず、休憩室でお菓子でも食べたら? 俺も行くし」
「そうですね。じゃあ、ご一緒させてもらいます」
二人はそう言って、休憩室に向かうのだった。
そして、そこでノッブにしがみついているナーサリーを見つけて再びオオガミが慌てるのは別の話。
久しぶりだけどいつも通りのナーサリー。大体フリーダムに暴れる子供担当。
もしかしたら今回の騒動がどこかでフラグになるかもしれない……