「いやぁ……平和だねぇ……」
「平和じゃないです先輩。アビーさんが暴走してます。あの屋台を一回止めてきてください」
「……一人で?」
イシュタルからの報告で聞いていたアビゲイルのたこ焼き屋。
買わずにいられない雰囲気があって、実際に買って食べると倒れるという怪奇現象。まるで
「先程坂本さんからも被害届が来たので、至急対処してください。アルトリアリリィさんが倒れたので、ここから一気に子供系サーヴァントの皆さんが被害に遭うと思います」
「そりゃ不味い。大至急行ってくる」
「はい。ちゃんと魔術礼装は装備していってくださいね」
「うん。とりあえず、何とかしてみるよ」
「いってらっしゃい、先輩」
そう言って、スタッフルームを出るオオガミ。
マシュはそれを手を振って見送るのだった。
「って、やっぱ暑いなぁ……」
「そんな時は、私がいるわ。涼しくするなら私が一番ね」
「うわぁ!?」
いつの間にか真後ろに立っているアナスタシア。流石に暑いのか、コート類は着ていなかった。
「い、いつからそこに?」
「茶々さんが例のたこ焼き屋のたこ焼きを食べて動けなくなっていたから、とりあえず報告に来ただけよ。エウリュアレさん達が介抱しているわ」
「なるほど……じゃあ、俺は向こうを止めてくるから、アナスタシアは医務室に行ってくれる? 面倒ならいいけど。医務室を涼しくしておいて」
「分かったわ。マスターも頑張ってね」
そう言って別れる二人。
おそらく茶々は野次馬のつもりで突撃していって、被害者になったのだろう。ミイラ取りがミイラになったわけだ。
「ったく、分かってて突っ込むんだよなぁ……いや、人の事は言えないんだけど。まぁ、なんとかなるかな?」
礼装を確認し、対話(物理)になってもいいようにするオオガミ。
そして、件のたこ焼き屋の前にたどり着く。
「いらっしゃいマスター。売れ行きは好調よ。一人で500個買ってくださった方もいたわ」
「何500個って。良く売り切れてないなここ。材料調達早すぎんだろ」
思わず突っ込むオオガミ。500個も買っていった人の安否が気になるが、それ以上に、それだけの数を売ったにも関わらず売り切れないというのは、材料がどれだけあるのかという疑問も湧いてくるというものだ。
というか、それだけ売れているなら完売していて欲しかった。
「私だって、ちゃんと考えているわ。500個売れたときは流石に焦ったけど、なんとか乗りきったもの」
「その手腕は認めるけど、中に何入れてるの? 普通のタコだったら被害は出ないと思うんだけど」
「えぇ。ただのタコもシンプルで良いと思ったのだけど、この触手、タコに似てるから使ってみたの。そうしたら売れ始めたから、このままで良いかなって」
「絶対それが原因じゃん! 禁止! 触手禁止!! ちゃんと普通のタコを使ってください!!」
「む。マスターに言われたのなら仕方ないわ。次はちゃんと普通のタコにするわね。そのために、今日はもう終了ね」
そう言って、アビゲイルはちょうど焼き上がったものをパックに詰めて、今日の営業を終了する。
「……それはどうするの?」
「ちびノブさんに渡そうかなって。一杯いるから、一人くらいこれを食べても問題ないわよね」
「ん~……その時は、アビーが責任もって世話をしてね?」
「えぇ、頑張るわ。じゃあ、明日のためにタコを取りに行ってくるわね」
そう言って、門を開いて行ってしまうアビゲイル。
オオガミは、どこに取りに行ったのだろうかと考えるが、とりあえずミッションは達成したので帰宅することにした。
アビー特製たこ焼きを500個買っていった人、誰でしょうかね……(遠い目
あ、一個=1パック(6個入り)ですよ(キリッ