「遂に川まで来たわね」
「叔母上はっやーい! 茶々あれ爆破したーい!」
「大気圏突入可能らしいですし、爆破もある程度は防ぐんじゃないでしょうか。切断系も、セイバー対策とかで付いている気がしますけど」
「じゃあ横殴りしかないじゃん! 叔母上めんどいな!」
茶々がぷんぷんと怒るが、エウリュアレは隣で微笑むだけだった。
昨日たこ焼き被害に遭って、今日にはもう動けるというのは、流石の一言だった。
「茶々はもう学習したからね。次はちゃんと警戒するよ」
「……フリかしら?」
「流石の茶々も基本は『いのちだいじに』だよ!?」
「えっ」
「えっ!?」
驚くエウリュアレと困惑する茶々。
隣にいるアナは、我関せずとばかりにレースを見守っていた。
「いやいやいや。むしろ、そうじゃなかったら茶々じゃないでしょ!?」
「そうかしら。てっきり、ぐだぐだ組だから『ガンガンいこうぜ』的なものだと思っていたわ」
「なん……だと……!? 叔母上たちのせいで茶々まで印象操作されてる……叔母上死すべし慈悲はない!」
「『いのちだいじに』『てきはころす』という若干の矛盾ね。敵の命は大事じゃないみたい」
「もちろんですとも。茶々ですから」
「……やっぱぐだぐだ組じゃない」
「どういうことなの!?」
ぐだぐだ組というジャンルに驚いているのと、そのジャンルに自分が入れられているのに納得されたことの二重の衝撃だった。
「まぁ、ぐだぐだ組の話はおいておくとして、さっき新しい屋台が出来てたわよ。制覇したいって言ってたから、一応伝えておくわね」
「新しい屋台!? ちょっと行ってくる!!」
「えぇ、行ってらっしゃい」
そう言って茶々を送り出すエウリュアレ。
しかし、それを聞いていたアナは、不思議そうな顔で、
「良いんですか?」
「え? 何か問題があったかしら」
「いえ……今日新しく追加されたのは、いか焼きですよ? アビゲイルさんが作っている」
「……それはもっと早く言って欲しかったわ!!」
そう言って茶々の後を追うエウリュアレ。アナはそれを見送りつつ、またレース観戦に戻る。
「……まぁ、あのいか焼きはまともそうでしたけどね。たこ焼きの二の舞にはならないと思いますし」
「えぇ。私も医務室で氷を作る係にならなくてすみそうだわ」
ぼそりと呟いたアナの隣に座るアナスタシア。
その手には、例のいか焼きを持っていた。
「……大丈夫そうですか?」
「流石に形を変えてまでやらないと思っているのだけど。食べる前に不安にさせないでほしいわ」
「それはすいません。じゃあ、毒味はさせてもらいます」
「いいわ、気にしなくて。ただ、私が倒れたら医務室まで運んでくださる?」
「……では、それで」
そう言って、一口食べるアナスタシア。
かなり微妙な差だが、表情が明るくなったのを見て、美味しかったのだと思うアナだった。
平和ないか焼き。安心して食べれますよ(白目