「あらあら……中々、不思議な地形ですわね」
「っ……!! なんで戻って……!?」
声の主を見て、驚愕するアビゲイル。
ロシアでさりげなく追い出していたのだが、いつの間にか帰ってきていたらしい。
「おぅ。俺もいるぞ。むしろなんで俺まで追い出されたのか分かんないんだけど、そこんとこ説明してくれね? 極寒の中をここまで来るの、普通に死ねるんだけど」
「くぅっ……やっぱりもう少し遠くまで飛ばさないとダメだったのね……!!」
「いや、単独顕現に対して遠くも何もないと思うんだよ俺。諦めた方がいいって」
「アンリは少し黙ってて」
「あまり騒ぎすぎるのも、よろしくないと思いますよ」
「なんで俺だけこんな役目なんだ?」
召喚された頃からわりとこんな役目な自分に疑問を持つが、今更すぎるのですぐに考えるのを止めるアンリ。
「ふふふ。別に気にしていませんわ。ですが、少々いたずらが過ぎると思いましたので、お仕置きをさせていただこうかと」
「い、いや……! やめて……!!」
「うふふ……逃がしませんわ?」
逃げようとしたアビゲイルを、出現した巨大な白い手がアビゲイルを包んで逃がさんとする。
しかし、必死でもがくが、アビゲイルは一向に逃げられない。
そんなアビゲイルにゆっくりと近付くキアラ。
「ふふふ。さて、どんなお仕置きにしましょうか……」
「き、キャーーー!!!」
「あ~はいはい。俺は店番しておくよ~。あ、店主はご覧の通りお取り込み中なので俺に注文してくれよな。え、500個? なんでこんな購入履歴あるんだよ。この店の材料凄すぎんだろ。在庫はどっから出てるんだよ……店主が自分で採ってきたんか、流石だな。門の乱用じゃねぇか」
連れ去られたアビゲイルを見送り、自然な様子で店番を代わるアンリ。
しかし、店の在庫状態や売り上げ履歴で困惑するアンリ。だが、注文に対して対応する辺り、手慣れていた。
「あら、今日はアビーじゃないのね」
「ん? あぁ、アンタか。なんだよ、女神っつっても、普通に楽しんでるんだな」
「えぇ。なにか問題かしら。別にいいでしょう? 食べ物も美味しいし、レースも見ていて飽きないし。むしろ、楽しまない理由がないわ」
「……まぁ、それもそうだな。いやなに、別段何かあるって訳でもないから気にしないでくれ。で、注文か?」
「そうね……とりあえず、二本でどうかしら。昨日はアビーだったから警戒していたけど、アンリなら大丈夫でしょう」
「信頼してくれてるって思っても良いのか?」
「貴方の勝手にしなさいな。私はいか焼きが食べられれば文句はないわ」
「へいへい。んじゃ、200QPなんで、払ってくださいな」
「たこ焼きと変わらないのは、料金を変えるのが面倒だったのかしらね」
「さぁね? 俺は本人じゃないからな」
そう言って、料金を払うエウリュアレ。
そして、アンリは軽口を叩きながらイカを焼くのだった。
久しぶりのアンリ。そして一番の問題点はキアラ復活なのでは……?