「ひ、酷い目に遭ったわ……」
「うぉ、生きて帰ってきやがった。不死身かよ」
「ただではやられないわ……アーサーさんをぶつけて逃げてきたの」
「圧倒的迷惑の極み。俺より危ねぇよこいつ」
レース会場とも、コースとも全く関係ない世界の端まで逃げ、追ってきたキアラに、焼き鳥を食べていたアーサーをぶつけて戻ってきたアビゲイル。
一瞬エクスカリバーに巻き込まれかけたが、触手が2本ほど犠牲になっただけで済んだ。
そんなボロボロのアビゲイルを見て、アンリは苦い顔になるのだった。
「これでしばらくは大丈夫だと思いたいのだけど、もしかしたらまたこっちに来るかもしれないわね……」
「いやぁ……お前もわりとこっち側だからなぁ……一緒に消し飛ばされるんじゃね?」
「い、いえ……流石にそんなことは無いはずよ……たぶん」
うんうん。と一人納得し、自然な様子でアンリの隣へ移動する。
「さて、じゃあ、交代よ。また襲撃されたら呼び出すわね」
「俺は便利屋か何かになったのか? いや、構わないけどさ。さっきかき氷屋の方がちょっと騒がしかったから、ちょっと見てくるわ」
「えぇ、行ってらっしゃい」
かき氷屋へと一直線に向かっていくアンリを見送ったアビゲイルは、エミヤお手製のエプロンを装備して再びイカを焼き始める。
「あぅ……逃げるのに手間取ったせいで、補充がほとんど出来てない……今日の分が終わったら補充しにいかないと」
「ふむ。仕入れも自力とは、中々力強い屋台だな。一本買いたいのだが、良いか?」
「一本200QPよ。焼けるまでちょっと待っててくださいな」
そう言って、相手の顔を見ると、P地溝帯で筋肉自慢していたゴリウー系女王だった。
「……お仕事お疲れ様でした」
「む? 何か勘違いしてるかもしれないが、私はオオガミのサーヴァントとしての私だ。コースの守護を任されていたのとはまた別だぞ?」
「そうなの? でも、働いてはいたのでしょう?」
「資材の運搬や、屋台の設置の手伝い程度だがな。何、軽い運動だ。対価は貰ったしな」
「や、屋台の設置……? そんなのがあっただなんて……私も頼めば良かったわ……!」
「でも、自力でやったのだろう? なら、それはいい経験になるはずだ。いつか、また屋台を出すときにな。一人でも出来ることに越したことはない。出来ない者に教えることが出来るからな」
そう言って笑うゴリウー系女王。
釣られてアビゲイルも笑顔になった。
「ところで、そろそろ良い加減じゃないか?」
「あら、本当ね。じゃあ……はい、どうぞ。またいらしてくださいね」
「あぁ、そのうちにな」
そう言って彼女は去っていくのだった。
ゴリウー系女王……いい人だった……(適当